(詩)八月の忘れた波音

わたしの耳は
忘れた波音聴いている
もう聴こえない
波の音、聴いている

遠ざかる
あなたの足音
思い出さぬよう
そっとしずかに
忘れてしまうよう

わたしの耳にはいつも
忘れられた八月の
しおざいだけが打ち寄せる

目をとじて
目をとじれば

そして波が引いた後
砂の粒だけがいつも
わたしのほおには残された

忘れられた八月の
砂の涙だけが、残された


そして
わたしの耳は今日も
忘れた波音聴いている
もう聴こえない
波の音を聴いている

いつまでも
いつまでも聴いている

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