(詩)土曜日の午後の人波

ただあてもなく歩きたい
とぼとぼ、とぼとぼ
歩きたい
土曜日の午後の人波の中を

駅の改札から
繁華街へと続く人波の中を

夕暮れから夜へと続く
あわただしい
ざわめきの中を

ただぼんやりと
ただ何も考えず
うたも歌わず
誰もさがさずに

土曜日の午後の人波の中を
ただ黙って
ひとりぼっちで

そして
ほんとのひとりぼっち
ひとりぼっちの
わたしに気付いたら

いくせんの人がゆきかう
土曜日の午後の人波の中で
ひとりぼっちの
わたしを見つけたら

こっそりと
ほんの少しだけ
静かに泣こう


ちゃんと家に帰ると
わかっているから

さびしくなったら
もう足も心も
家へと向かっているから

土曜日の午後の人波は
いつもこんなにたくさん
いっぱいの人の中にいて
こんなにたくさん
いっぱいの人の中にいるのに
いつも

人恋しくなってしまう、こと
心はちゃんと知っているから

気付いたらもう家へと
向かっているから、ね

だから大丈夫だよ
ちゃんと
きみのところへ
帰ってゆくから

土曜日の午後の人波の中を
迷子のように
とぼとぼ、とぼとぼ

きみのところへ
かえってゆくから

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