冬の海のスケッチ
(一)
日が沈むのを
海といっしょに
見ていたかった
今日という日が
終わってゆくのを
見届けたかった
(二)
砂浜に残った波の跡
あまりの寒さに
白く凍りついていた
しおの跡
その上を歩く
さっきまで
波が打ち寄せていた
その場所を歩く
海のにおいがふと
ぼくを包み込む一瞬
海の中を歩いているような
たしかに今
海とひとつに
なったような気がした
(三)
海を独り占めしたくて
誰かがいる間は
ぼくも残っていた
結局今日も
ひとりになるまで
海を見ていた
(四)
今日こそ
波の音を忘れないように
胸の中に刻みつけようと
夢中で聴いていたはずなのに
またいつのまにか
忘れていた
これじゃまた
海に来なきゃいけないね
これじゃまた
どうしても海に
来たくなっちゃうね
(五)
いつまでも
海が見送ってくれた
大丈夫、
また来るからね
だいじょうぶ
いやだな
そんなに優しくされると
なんだかもう
会えなくなる、みたいじゃない
なんだかもうこれで
海を見に来れなくなる
みたいじゃない
大丈夫、
だいじょうぶ
いつまでも海が
見送ってくれていた