(詩)夢のその後のために
どうしてきみは
ぼくを好きになってくれたのだろう
こんな何の取り柄もない
金もない
ただ人生に草臥れた
わたしなんかに
どうして恋をしてくれたんだろう
そしてきみの大切なその貴重な
時間と心とをぼくなんかのために
無駄に費やしてくれるのだろう
多分きっと何かの間違いだったり
勘違いだったりに違いない
そうでなければ
こんなことは現実に起こり得ない
絶対に有り得ない
いやあってはいけないことなのだ
なのに確かにきみは
だとしたら
これは夢なのかも知れない
きみがぼくという夢を見
ぼくがきみという夢を
見ているだけ
きみとぼくとが
そんなひとつの夢の中で
わずかな時を分かち合い
同じ夢を生きている
けれどやがて夢は終わるのだ
だから
海へ行きたかった
せめてきみとは海へ
行きたかった
夢のその後のために
海だけが覚えていてくれる
海だけは失われたぼくたちの
はかなき夢を
そしていつまでも抱きしめて
ぼくたちが寄り添っていた海辺へと
ぼくたちが去った後にも今も
変わることなく打ち寄せてくれるだろう
すべての失われた夢と願いを込めて
海は打ち寄せ、また打ち寄せる
もう遥か遠い昔に失った
そんな恋と海との記憶を
人は誰もひとつふたつ
心の奥に持っているのだろう
だから人は海を見ると
泣いてみたくなる