(詩)今宵も夜が咲き華が散る

ある日どこかでめぐり会った
男と女が恋に落ち
やがて結ばれ
華やかな或いはささやかな挙式の後に
新しく宿った命が生まれ来る
そして育った
少年なり少女なりが大人になって
またある日どこかで
おんなじように生まれ育った
何処かの街の誰かと
めぐり会い、恋に落ちる

ただそれだけのこと
ただそれだけ、なのに
ただそれだけが
手を替え品を替え
相手を替え、喜怒哀楽を替えながら
数千年数万年、四季はめぐり
繰り返され、続いてきたという
この星の上に

幾千の夜があり、幾千の朝があった
幾千のいとしき華々が
幾千の夜の巷に咲き乱れ
幾千の恋愛と憎悪の中で
そして散っていった
それはあたかも一種の
戦場であるが如くに
今宵も夜が咲き、華が散る

ただそれだけのこと
ただそれだけを
夢のように観ながら
ただじっとこの星のかたすみで
風に揺れ、笑みに泣く
わたしは寂れた
一本の草でありたかった

幾千の華が咲き
幾千の夜が散った後に

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