(詩)ひぐれ
たとえば仕事を終え
今夜のねぐらを探して歩く
日雇い労働者のように
ともり出した新宿のネオン街を
あてもなくさまよい歩く
そこに失った
おそらくは
わずか数十年の
短い歳月の流れの中でなくした
地平線の大地を捜して
それ相当の学問や技術や材料や
また多くの人の汗水を費やせば
ビルも建ち会社も建ち
商店街や飲み屋やらも
できるだろう
開発や振興の名のもとに
数十年、遥か夢のごとく
こうしてできた
ひぐれの新宿のネオン街に
今日も人々が集まり出す
そのざわめきの中で
人々の多くが
わずか数億円足らずの
生涯賃金とひきかえに失った
この地平線の大地の
においをさがしながら
数十年まっすぐに
汗水たらして
ビルやら家やらを建ててきた
日雇い労働の、ひとりの男が
今夜ゆっくりと
ねむる場所もありません
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