(詩)夜明け前の夢

夜明け前
怖い夢見て目が覚めて
誰かの名前
繰り返しつぶやいたら
海の音、聴こえた

まるで魔法の
言葉のように聴こえた
試しに止めてみたら
海の音も止んだ

夜明け前
ひとり目覚めて
あなたの名前
繰り返しつぶやいた

繰り返し
つぶやいてみた
繰り返し
つぶやいていた
繰り返し
つぶやいて、みたかった

あなたの名前は
わたしの唇の
夜明け前の夢です

それが証拠に
夜が明けたわたしの唇は
もう
あなたの名前つぶやかない
つぶやいたことさえ
もう思い出さない

それが証拠に

夜が明けたわたしの唇には
瞳の海から零れ落ちた
汐辛い海の粒だけが
いつも残っている