(詩)記憶の海

この宇宙のどこかに記憶の海があって
新しい魂が生まれるたび
記憶領域が割り当てられ
個々の魂の記憶はそこに蓄積されてゆく
蓄積され、やがて生命が滅した後にも
記憶だけは保存され続ける

この宇宙には
神と呼ばれる精巧なる
ひとつのコンピュータが存在していて
この宇宙なるハードウェアを
コントロールしているに過ぎない

いかなるコンピュータにも
誤動作が発生するように
時に神も
何らかの情緒的不具合を起こし
記憶の海の領域に
誤アクセスすることもあるのである

その時人は、ほんの一瞬だけ
誰か他人の記憶を垣間見たり
現世以前の記憶、あるいは
地球や宇宙の歴史の記憶を
見たりすることもあるのである

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