第三惑星
花開く時その瞬間に
花はうっすらと
夢のように思い出し
すぐに忘れた
むかしいつか
はるか遠いむかし
咲かずにつぼみのまま
枯れた日のことを
さなぎからかえる時
その一瞬のうちに
ちょうの
のうりをよぎり
すぐに消えた風景たち
たとえば
むかしさなぎのままで
終わった一生
さなぎの中から
薄っすらと見えていた
空の青さ
星のまたたく夜の海辺で
はじめてきみを抱きしめた時
ぼくも思い出した
その幻とも錯覚ともつかない
記憶のかけら
咲かずにつぼみのままで
枯れた花のなげき
さなぎのままで終わった
ちょうのかなしみを
想い合いながら
結ばれることなく
離れていった
恋人たちのいとしさ
ずっとひとりで暮らした
誰かのさびしさを
あいしている
今すべての人にささやくように
きみにいうよ
あいしている
すべての生命を
抱きしめるつもりで
今はきみを
抱きしめていよう
すべての人を愛するために
ぼくは
きみを愛そう
すべての生命といたみを
抱きしめるために
ぼくは
きみを抱きしめよう
あいしている
あいしていた
ずっと
きみとめぐり会う
はるか遠いむかしから
ずっとぼくは
きみを
あいしていた
いつもきみのことを
想いつづけていた
そして
ぼくたちはひとつだった
ぼくたちがめぐり会う
はるか遠いむかしから
ぼくたち生命はみんな
おなじひとつの生命だと
おなじひとつの夢を見て
おなじ一粒の涙を流し
ぼくたちはそうやって
この
永久の時の流れの中を
肉体も存在も
時代も場所も
たとえ
生命の種類さえ違っても
大宇宙
銀河系、太陽系、
第三惑星、地球と呼ばれた
この星の上で
ぼくたちは
ずっといっしょに
生きてきたと
あいしていた
きみとめぐり会う
はるか遠いむかしから
きみを、あいしていた
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