(詩)猫じゃらしの忘れ物
猫じゃらしに
しがみついた蝉の抜け殻に
雪が降り積もった
猫じゃらしに積もった雪に
太陽の光が降り注いで
蝉の抜け殻、また顔を出した
猫じゃらしに
しがみついた蝉の抜け殻に
タンポポの風が吹き
てんとう虫が留まった
タンポポの種は
夢見るように羽根広げ飛んでゆき
てんとう虫は落ちて転がり
土に眠った
激しい雨の後、また夏が来て
蝉たちは
猫じゃらしに
しがみついた蝉の抜け殻を
どこか懐かしそうに
見詰めながら鳴いた
やがて蝉時雨は途絶え
落葉が風に舞う頃
一匹の野良猫がやって来て
猫じゃらしにじゃれ付いたら
猫じゃらしに
しがみついた蝉の抜け殻は
音も無く地面に落ちた
野良猫の毛の付いた
猫じゃらしに
また雪が降り積もった
忘れ物は何ですか
忘れ物をしたのは誰ですか
この星はいつも
忘れ物でいっぱい