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(詩集)きみの夢に届くまで

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詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?
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(詩)きみの夢に届くまで

この夜の何処かで 今もきみが眠っているなら この夜の何処かに 今きみはひとりぼっち 寒そうに身を隠しているから 今宵も降り頻る銀河の雨の中を 宛てもなくさがしている 今もこの夜の都会の片隅 ネオンの雨にずぶ濡れに打たれながら 膝抱えさがしているのは きみの夢 幾数千万の人波に紛れながら 路上に落ちた夢の欠片掻き集め きみの笑い顔を作って 都会に零れ落ちた涙の欠片の中に きみの涙を見つけ出せば 今も夢の中で俺をさがし求める きみの姿が見えるから この夜の何処かに 今もきみが

(詩)月の空に

或る未来 人類は遂に 月旅行するようになったとさ 例えばディズニーランドや 海外旅行に行く気分でね ところが無事ロケットが 月に着陸しても そこには何にもなかった ほんとに何にもなーい ただ巨大な石ころがゴロゴロ 殺風景な月面がどこまでも 果てしなく広がっているだけ うさぎ一匹いやしない どうすんだよ、つまんねーっ 大金はたいて わざわざこんなとこまで のこのこやって来たっていうのに ほんとに何にもなーい、と 見上げた月の空に浮かぶ 地球の姿は美しかった 人々はみな

(詩)赤い靴になりたい

その子は赤い靴が ほしかったんだ バレリーナみたいな赤い靴 だけど家が貧乏でね だからいつも 靴屋さんの窓ガラスに 鼻くっつけて見ていた だけどその子 死んじゃった 戦車にひかれてね その子はいなくなって 赤い靴だけが残った 赤い靴になりたい そしてその子といっしょに 踊りたかった そりゃ気持ちのいい 潮風が吹いて その子の髪をかき回して ぐちゃぐちゃにする砂浜で 戦車のいない この地球の上で

(詩)青空よ、ありがとう

青空よ、今日もありがとう 今まで何人の人を勇気付け 何人の人に夢と希望を与え 何人の人の涙を そのまぶしさで拭ってきたか 時に灰色の雲に覆われ 冷たい雨に打ちのめされ 降り積もった雪の前に 幾度、道を閉ざされてきたか それでも明日は晴れる そう信じた 弱くはかなき人間たちの 夢と望みと願いの すべてを抱きしめ 人々の涙と絶望を 魔法のように 笑顔に変えてくれたね 青空よ、ありがとう 青空よ 今日もありがとう いつまでも、いつまでも ずっと そのままでいて下さい

(詩)愛よりも青い空

空はいつもそこにいる 空はいつもそこにいた 空はいつも、そこにいてくれました 空と神様と どっちが早く生まれた どっちがどっちを創った わたしには分からない わたしはただの流れ者 今空の中に生まれ、浮かび、漂い そして流れ去り、消えてゆく 白い雲の欠片とおんなじだから わたしには、なんにも分からない 空はいつも、そこにいた 見上げれば、いつもそこに わたしに分かるのはそれだけ わたしに分かるのは 空は青い、ということだけ わたしが生まれる前から そこにいた青い空 そし

(詩)下手ないいわけ

ほら、耳をすますと しおの音がするだろ どこにいてもぼくたちは いつでも思い出せる しずかに目を閉じれば どこからか遠い しおの音が響いてくる だからぼくたちは すぐに思い出せるんだ だからぼくは すぐに感じられる あなたのことを 今は遠く離れていても すぐにあなたのことを 感じられる どこかの海の 海ならば 銀河でもいい 都会でもいい どこか遠い宇宙の果て この星のかたすみ うらさびれた街でもいい それら この宇宙の中の どこかの海の しおの流れの中に 今も

(詩)夕映え飛行

空、雲 鳥の群れ 夕映えの海 飛ぶ、という言葉は 鳥のためにあると 思っていた 翼を持つ者たち だけのために ある言葉だと 空、雲 鳥の群れ 夕映えの 穏やかな波 誰もいない 波打ち際に突っ立って 押し寄せる波に 汚れた足を洗いながら そっと手を広げて見る あたりを見回し 誰も見ていないのを 確かめながら 思い切りうでを上げ 空いっぱいに広げてみる 空をゆく鳥たちが ほんの一瞬おどろいて わたしを見る もしかしてあいつ、 飛ぼうとしているのか あいつ、飛べるの

(詩)いつか聴いた波音

いつもざわめきが ふいに都会の 人の足音が途絶えると さがしてしまう さがしてしまうのは ほんの一瞬の沈黙の中に 思い出そうとして 乾いた唇にどうやって 忘れた波音 真似ようとするのか 波音を、それも もうすでに忘れ果てた すでにもう失い 悔やむことさえ諦めた あの きみと行った海 きみとだけ行った海 きみとだけ行きたかった ほんの一瞬の記憶の中に 忘れようとして 泣きそうな唇に どうしても 刻み付けられた波音は わたしの耳が 沈黙に帰る時だけ ひりひりと疼くらし

(詩)誕生

音がどこからやってくるか 知っているかい 色がどこからやってくるか 風、水、土 におい 女の子の手の感触 にんじんの甘い味 街灯の光、電車の光 夜行列車の流れ去る光 飛行機のライト、夜の空港 潮騒を照らす港の灯り 遠ざかる船 さようならという言葉は 光でできている 好きとか愛していると同じ 成分でできている ありがとうと 同じ意味を持つ 今ぼくたちは別れ きみはもう 会えないから かなしいと言う けれどぼくたちは みんな 光の中から生まれた 夜空にまたたく 星

(詩)エンディングテーマ

約束したね ふたり突っ立って 海を見ていようって よせかえす波が ねぇ、 この波がおわるまで 海がとまるまで、さ ふたりで見ていようって 約束したじゃない それじゃ ずっとってこと? いつまでも  いつまでも 永遠ってこと、さ ふたり並んで いつか世界中の 海の波の しおざいがやむまで ぼくたちの呼吸と そして あなたの涙がおわるまで いつまでも  いつまでも、さ いつまでも  いつまでも、ね そしていつも 夏の終わりの海辺には 恋人たちの 約束だけがのこさ

(詩)ラッシュアワーのQ太郎

知らない者同士が相席したり 知らない者同士が 並んで立ったり、向かい合ったり でも言葉は交わさない 挨拶も視線もなんにも みんな ただそこにそうしているだけ 名前も知らない 何も知らない人たちの中で 今日もこうして わたしは生きている 人の数だけ それぞれの人生があって そんな人生に 今囲まれながら 確かに囲まれていながら やっぱりわたしは ひとりぽっちでいる 今日もわたしはひとりで こうして確かに それでもやっぱり 生きているようです 誰かを励ますことなく 誰かに励ま

(詩)ええと、ええと

あなたの長所は? ええと、ええと……。 この会社の志望動機は? ええと、ええと……。 きみの夢は? ええと、ええと……。 何で生きてんの、あんた? ええと、ええと……。 こんにちは! ええと、ええと……。 さようなら(涙) ええと、ええと……。 きみの答えはいつも ええと、ええと……。 言葉が想いに追いつかないんだね いい言葉が見つからないんだね きみの夢は言葉では うまく言い表せないから ぼくとさようならした時も 俯いて ええと、ええと……。 いつかきみの名前も き

(詩)空は遠くなりにけり

都会では空が見えない 見えるのはビルばかり 空はどこへ行った 空があるから 生きられた、 やっと気付いたよ じゃ都会の人は 何を支えに生きている 空のかわりに 都会では 高層ビルで生きている ビルがあるから 生きられた、なんてね 空は遠くなりにけり 心のふるさとは 見上げれば いつでも すぐそこに そこで待っている

(詩)白い雲が船の形で

白い船に憧れた雲が 船の形で浮かんでいるから ついつい自分を海だと 錯覚した青い空は 港のつもりで 雲の船を見送っている 船の雲が水平線のつもりの 地平線の彼方へと消えてゆく時 別れを惜しんだ青空は ついポロリと涙を零すんだな 夕暮れに通り雨が多いのは そのせい