漫画家が漫画家を描く、ということ
最近、ドラマで「主人公が漫画家」と言う設定が多いなぁ、と感じています。
1クールに必ず1つ以上は、「主人公が漫画家」のドラマがあるなー、
と思うのですが。
昨年(2021年)だと、「レンアイ漫画家」「あのときキスさえしておけば」等。(両方観てないけど)
「主人公が漫画家」だと、きっと製作側にとって、都合のいいことが
いっぱい有るのだろうと思います。
たとえば(多分だけど)低予算で作れる。
漫画家の仕事現場というものは、大抵「自宅の自分の部屋」であって、
売れっ子の設定であれば、ちょっと広めの部屋にアシスタント役を
2、3人散らばせておけばよい。
医療ドラマや学園ドラマだとそうはいかないだろうし。
(セットも大がかりだろうし、エキストラも多数必要)
一昔前だと「漫画家」という職業は、かなり特殊なものだったし、漫画家というものの私生活などは謎のベールに包まれていました。
だから漫画家が主人公というドラマは、そんなにはなかったように思うんだけど。(アパートの隣に住む謎の住人が駆け出しの漫画家で…、という設定はよくあった)
私が印象に残っている「少女漫画家が主人公」のドラマがあります。
もう30年ほど前のドラマなのですが。
主人公、大竹しのぶさんが大御所少女漫画家の役で、
清水美砂さん、相楽晴子さんがアシスタントの役でした。
(泉ピン子さんも出ていたけど、どういう役だったのかよくわからない)
大竹しのぶさんのキャラクターが、いかにも大御所少女漫画家!て感じでもうほんとに強烈でした。
(おそらく)それまでは一部の人たちのみで認知され、公に語られなかった「大御所少女漫画家とそのアシスタント」という関係を、
お茶の間にさらけ出した(と、いう言い方は変かな)最初のドラマだ…と
思うのですが、ちょっと記憶が曖昧です。
再放送の覚えもないし、1回しか観てないし、全話ちゃんと観たわけでもないし、遠い昔…だし、細かいストーリーなどはうっすらとしか
覚えていないので…。
でも、女の世界の、騙し騙されというドロドロの関係が、スリリングでハラハラドキドキして「めっちゃおもしろい!」と思ったことを覚えています。
詳しくは忘れてしまったけど、断片的に覚えているシーンは、
現在、私の描く漫画にも、ものすごく影響を与えていると感じています。
「私もこんな女同士のドロドロした関係が描きたい!」と思いました。
大竹さん演じる少女漫画家は、年齢不詳で浮世離れしていて、
いらっとくるほど、我儘。
ずっと少女漫画家なので、男性経験もあまりないので、
恋愛対象は担当編集者のみ。
当時の世間が想像し、期待する少女漫画家像とはこういうものだったのだと思います。
でも、仕事に対する情熱は普通の人よりも何倍も熱い。
それに、天才で、努力家。
(大竹しのぶさん自身が反映されていたのだと思います)
漫画家に限らず、どんな職業を扱うドラマでも、
「主人公の仕事に対する情熱」をどのように描くか、
ここが共通する大事なところです。
現在では結構、漫画家という職業は、みんな身近に感じているのかも?とも
思えます。
昔みたいに「特殊」ではなく、めちゃくちゃ浮世離れしているわけでもないし。
誰でもどんな年齢の人でも他に職業をもっていても、漫画家になるチャンスはあるし、漫画は誰でも描いてもいいし。
ともあれ、「医者」「教師」「刑事」「弁護士」などに並んで、
「漫画家」はドラマの主人公の定番になりつつある…のかな?
あと、漫画家が主人公のドラマが増えているということは、
そもそも、原作が漫画のドラマが年々増えていて、今では当たり前のように
なっているということにも理由があるのかも。
漫画が原作のドラマが増えている
↓
そもそも原作である漫画自体に、漫画家が主人公であること…
つまり「漫画家が漫画家を描く」ことが増えている…ともいえるのでは?
(と、いうのは私の勝手な見解ですが)
ですので、今回は「漫画家が漫画家を描くこと」について書きたいと思います。(前置き長い)
漫画家が漫画家を描く、ということ
漫画家であればきっと、一度は「漫画家が主人公の漫画」を描いてみたい、
と思うものだと思います。(個人の意見ですが…)
だって数多くある職業もので、「漫画家」であれば、
特に調べることもないし、取材とかも別にいらない。
なんせ自分の仕事なんだから、一番よく知っている。
それに、
自分の想いをそのままストレートにぶつけられる!
「主人公が漫画家」の「漫画」
つまり、「漫画家漫画」を見つけると、つい
読んでみたくなっちゃいます。
そして、どの漫画を読んでも、
「ううう、わかるわかる~」と、ぐっとハートをつかまれてしまうのです。
それは、私も「漫画家」だから。
ボツになった悔しさ、掲載された喜び、徹夜明けの解放感、
漫画への愛情…。
あとは、細かい「あるある」。
大御所とアシスタントの関係もそうですが、
漫画家と編集者の関係、なんかも
当たり前だと思っていたけど、よく考えると
かなりブラックだったりして、
「はっ!」と気づかされることが多いです。
描くことは辛いことがいっぱい。それでも私は漫画を描く!
と、いう気持ちはどんな漫画家であっても、同じ。
一番有名なのは、藤子不二雄A先生の「まんが道」でしょう。
私ももちろん、大好き!
あとは有名なのは、「バクマン」?
少年漫画は読まない私でも、ドキドキしながら読んでいました。
あとは、数年ごとに読み返しているのは
「編集王」です。
この泥臭さがたまらん!
現在ドラマで放送中の「シジュウカラ」も、主人公は漫画家です。
原作の漫画の方は、途中まで読みました。
この作品は、今までの漫画家漫画とは違う!
と、思いました。
主人公は、40歳の売れない漫画家。
結婚して息子もいます。
若いときにデビューして漫画家にはなったけど、
大御所のアシスタントをしながら、ヒット作は無く、
気づけば40歳で、家庭もあるし、自分の人生、こんなもの…という
状況から一変、もう一度作家として返り咲くチャンスが…?
と、いう…
今までになかった設定で、とてもリアルで、ドキドキします!
漫画家という職業にかなり未練や思い残しがあって、
同時に旦那への恨み(妊娠中に浮気されてた)が
沸々と沸いてくる…
というあたりもリアル!
もう40歳。
でも…
「漫画家としても」そして「女としても」
まだ諦めない!
というテーマが伝わります。
これぞこれからの女性のための漫画だ!と思いました。
(…て、まだ3巻までしか読んでないんですけどね…)
この漫画は、もう、完全に「女性目線」であるというところが
すごく新しいと感じました。
主人公が漫画家という設定であっても、
男性作家なのか、女性作家なのか、
売れっ子なのか、新人なのか、もしくは
まだデビューできずアシスタント止まりなのか、
まったく売れていないままなのか、
年齢は?キャリアは?実力は?
加えて
独身なのか既婚者なのか、パートナーや家族は協力的なのか、
反対しているのか。
それでまったく切り口は違ってきます。
「少女漫画家って、きっとこんなんでしょ」というステレオタイプなきめつけは、これからはもう通用しないと思います。
男性漫画家の描く漫画家漫画であれば、
「シジュウカラ」の主人公のようなモヤモヤや悩みは生まれなかった。
これを読んで、漫画家漫画も、新しい時代がきてるなぁと
感じました。
「漫画家漫画」を描きたい!
私と同じように、「漫画家漫画」を読むのが
めっちゃ好き!
そしていずれ自分も描いてみたい!
と、思う人は多いと思います。
でも、私から一言いわせてください。
まだ新人のうち(デビューして5年くらい?)
のうちは、まだ手を出さないでいたほうがいい…
と思います。
「主人公が漫画家」という設定だけならいいんです。
テーマが「恋愛」であったりして、別にあるという場合は
いいのですが、
ガッツリと「漫画家というものを描く!」となると、
まだ、描くのは我慢しておいたほうがいいと思います。
コミックエッセイでデビューまでを描いてみた…とかなら
日記みたいなものだしいいとは思うのですが…
それよりも、「お仕事漫画」を描くのであれば、
自分がしてきた職業(バイトなど)の
業界あるあると描くとか、
または、違う職業を調べて漫画にする…のほうが
いいと思います。
なぜかというと、漫画家は、たとえ漫画家という職業しか
知らなくても、どんな職業であっても
「もしも自分がこの仕事をしたら…」
「もしも自分がこの人のような立場だったら…」という
想像力が必要だからです。
恋愛ものを描いていると、
「これって自分の経験談?」とにやにやしながら
聞いてくる人が必ずいるものですが、(たいていオジサン)
人は、自分の経験してきたことしか書けないという
わけではありません。当たり前のことですが。
たとえ、主人公が殺人犯であっても、
その主人公と自分自身とを対峙する必要があります。
新人のころや、まだまだ描く量が足りない人は、
まだまだ漫画家を描くのは早すぎます。
(なんて、偉そうなことを言って恐縮ですが…)
せめて10年、15年くらいこの仕事をしてからでないと
手を出せないジャンルなのではないかと思います。
(と、いうのが私の意見です)
とかいいながら
私も描いちゃいました!
私も「漫画家漫画」を描いてみた。
一応、デビューして30年経っているので、もういいでしょう…
と、自分を解禁しました。(笑)
最初は、5ページで完結の、超短編だったのですが
気に入ってるシリーズだったので、
続きも描くことにしました。
5ページで完結だった物語の続きがこちらです。
(無料です!)
60ページほど費やしましたが、
まだ完結していません。
ラストシーンはだいたい決まっているのですが、
せっかくなので、もう少し練ってみてよく考えながら
この先も描いていこうと思います。
「いつか私も漫画家漫画を描きたいな…」
と、長く思い続けてきて、ようやくその
夢が叶いました。
インディーズなので原稿料が発生しないところが
苦しいですが、
そのかわり、自由に描けます。
新人のうちに、漫画家漫画に手を出さないほうがいい…という
理由は、他にもあって、
新人のころは、編集者によって大きく作品が
変わってしまう(変えられてしまう)ことが
よくあるからです。
担当編集者にOK をもらわなければならないという
枷を背負った新人漫画家には、やはり難しいんじゃないかと
思います。
(編集者の悪口なんて書けないし、忖度してしまうことも…)
あと、このシリーズ、「BlackLily黒百合短編集」は、
「女だけの世界」という設定です。
男はそもそも存在しない、というパラレルな世界(笑)という設定。
女しかいない世界のほうが、嫉妬とか束縛とか、ものすっごいドロドロしそうな気がして…(笑)。
そして、この少女漫画家編は、現代よりも、少し昔、という感じです。
まだ今のように Web漫画は無く、
漫画家というものは、大手の雑誌で描くしか他に方法はない、という
少し前の世界です。
いろいろ突っ込みどころも満載でしょうが…
この設定と世界観なら、昔私が「こんなの描いてみたい!」と思った
漫画家漫画が描ける!
と楽しんで描いています。
(結局最後は自分の宣伝ですみません…)
よかったら、ぜひ、読んでみてください!
(無料です~!)
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