君の背　｜詩

君の背を抜かした
君は155cm、僕は160cm
君のおでこに目線がぶつかるようになった
今まで何度もチビだと言われてきたけど
これでもう馬鹿にされることもない
と思っていたのに
君は負けず嫌いだから
背伸びをして追い抜かそうとしてくる
君の背よりも僕の背がうんと高くなって
もう追い抜かれないように
もっと牛乳を飲まないと

君の背を抜かした
君は155cm、僕は170cm
君のつむじがだいぶ遠くなった
今まで何度ももやしと言われてきたけど
これでもう馬鹿にされることもない
と思っていたのに
君は面倒見がいいから
なにかと重い荷物を持とうとしてくる
君の背よりも僕の背の方が高いのに
もう荷物を持たせないように
もっと筋肉をつけないと

君の背を抜かした
君は155cm、僕は175cm
君が昔よりもずっと小さくなった
今まで何度もひ弱と言われてきたけど
これでもう馬鹿にされることもない
と思っていたのに
君は優しいから
すぐ悩み相談にのろうとする
君の背よりも僕の背の方がはるかに高いのに
もう心配させないように
もっとしっかりしないと

君の背は抜かしたけど
僕の弱さは変わらない
僕の背は大きくなったけど
僕が背負うものは
僕が君の背を抜かしたあの頃と
何も変わっていない

君の背は抜かしたけど
君の強さは増している
君の背は変わらないのに
君が背負うものは
僕が君の背を抜かしたあの頃より
ずっとずっと重くなっている

変わらない小さな背
上に背負う大きなもの
僕にも一緒に背負わせてほしい
君にとって僕は弱いから
すごく不服で
半分しか渡してくれないかもしれないけど

変わらない小さな背
上に背負う大きなもの
僕にも一緒に背負わせてほしい
君にとって僕は頼りないから
すごく不本意で
半分も渡してくれないかもしれないけど

君の背を抜かした
一生懸命背伸びをして黒板を消す姿が
君よりも高くなった僕を見上げる瞳が
全てが可愛い

君の背を抜かした
僕を素直に頼れない性格が
昔と変わらない眩しい笑顔が
全てが愛おしい