【春日詣】明恵上人と春日明神の邂逅を辿る旅

私が敬愛する明恵上人(みょうえしょうにん)。
明恵上人を慕う人々は「明恵さん」と呼んでいます。
鎌倉時代の高僧・明恵上人は夢日記を40年間記し、夢の中でも修行を重ねた、探究心旺盛なお方です。
その純粋さ、情熱ゆえ、おもしろエピソードも満載です。

明恵上人は母のお腹にいる時から春日明神に守護されていました。
明恵上人には温めていた夢がありました。
父と仰ぐ釈迦が修行した地、天竺へと旅することです。
31歳の時、天竺へ修行の旅に出ようとしましたが、春日明神の御宣託で止められ、断念します。
明恵上人は都を離れ、故郷の紀伊で隠遁修行を続けていましたが、春日明神に「京都に居を構え、多くの衆生を救いなさい」と諭されたのです。

後日、明恵上人は春日大社へ参拝し、夢を断念したことを報告します。
東大寺へ寄ると、中御門で神鹿たちが一斉に伏せ、香気が満ちました。
不思議に思っていると、後日の夢に春日明神が現れます。
鹿が伏せたのは春日明神がお迎えに来てくれていたのだと分かり、明恵上人は馬から降りなかったことを詫びます。
春日明神は「愛子に過(とが)なし」と伝え、対話は続きました。

2年後、学問も修行も手につかなくなった明恵上人は天竺への想いを再燃させます。
旅支度を整えますが、不思議の病にかかり、出発どころではなくなります。
釈迦本尊、春日明神、善知識曼荼羅の前で「くじ神託」にてお伺いを立てると、すべて「渡るべからず」と出ました。
明恵上人は、覚悟を決め、京都の槇尾に居を移します。
翌年、後鳥羽上皇から栂尾に高山寺を賜り、開祖として大きな仕事を次々と成してゆきます。
春日明神はそれを喜び、明恵上人のそばに眷属を置き、守護しました。

60年の生涯の中で、天竺への想いを形にしようとしていた頃が、身も心もゆれ動いていた、辛い時期だったのかもしれません。

先日、私も明恵上人の足跡を辿り、春日大社と東大寺に参詣しました。
一の鳥居、ニノ鳥居と歩みを進めながら、心の奥に静けさと高揚が広がりました。
雨上がりの杜の美しい景色や神鹿たちの佇まいを、おすそ分けさせてください。

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