Novelber2020/03:落葉
目の前に、はらりと音もなく葉が落ちた。
セレスはそれをぼんやりと見つめてから、足元に目を移す。今落ちた一枚のほかに、たくさんの葉が落ちていることに遅れて気づく。足を少し動かせば、ぱり、と枯れた葉が割れる音が響いた。
季節が訪れれば木々の葉は落ちるものであり、季節が巡れば再び芽吹くのだと。知識ではわかっていても、こうして目や肌を通して感じるのとではやはり大きな違いがあるのだとセレスは思っている。
風が木々を揺らし、もう一枚葉が落ちるのを、はっしと中空で捕まえる。
セレスの手と同じくらいの大きさをした、赤みを帯びた枯れ葉。セレスはこの葉を――葉を生やす木の名前を知らなかったから。
「ゲイル、聞きたいことがあります」
葉を手にしたまま、ぱりぱりと葉を踏む足音を立てて駆け出す。
ゲイルから葉の名前を聞いたら、忘れないうちに記録をしよう。大切な、秋の思い出のひとつとして。
(秋深まったサードカーテン島にて)
あざらしの餌がすこしだけ豪華になります。