送信履歴♭8 4つ目の月に捕らわれてはいけない
「4つめの月が、われわれを捕らえようとしている。わしにはそう思えてならんのじゃ。」、プルマンの目は4人から離れ、目に見えないどこか遠くを見ているようだった。
引きつける人プルマンはまた、惹きつける人でもある。仲間の4人とは意思が共有できなくなってしまったけれども、この問題を解決するには目には届かないところにいるキーマンが必要な気がしていた。
そしてそれは、数少ないヒントから察すれば、6番目に共有した人物しかいない。
まだ見ぬ6番目の共有者、その人物が切れた共有の糸を元に戻してくれる、おそらく。だからプルマンはその人物を引きつけなければならない。自分の提言に惹かれてくれなければならない。
確信はなかったが、それしか選ぶ道はない。選択肢などないのだ。道は前に進むか後ろに下がるかしかない。
足を止め、とどまることはできなかった。とどまることは、つまりは悪化していく現状を容認することになるからだ。
後ろに戻ることもできなかった。それはつまり、それはつまり……不安と膝を抱えたまま何もしないことと同じだからだ。
なんだ、とプルマンが気づく。とどまることと後戻りは結局は同じじゃないか。
選択肢は、最初から前に進むか進まないか、この2択しかなかったのだ。
これまで、しなければならないことを黙々とこなせばよかった小さな人たちに、初めて“選択すること”の意志が生まれた。
タイピストが記録マシンに記す文字列は、きっと6番目の共有者に届く。
根拠のない自信などではない。切なく選択肢のない生まれたてで初の希望だった。
4つ目の月がわれわれを捕まえようとしている。
何のために?
喰らうため?
5人は同時に「よし」と気合を入れ、自分がやらなければならないことに取り掛かった。
(続く)
この道に“才”があるかどうかのバロメーターだと意を決し。ご判断いただければ幸いです。さて…。