ヨーグルトで病弱を卒業した件
小学校に入る前の私は、とにかく身体が弱かった。入院こそしなかったが流行りの風邪はきっちりもらってしまい、氷枕に散々お世話になっていた。おまけに喘息持ちで、常に吸入器を付けて過ごしていた。そんな私は中学・高校で別人の如く健康になった。なんと一日も休まなかったのである。いったい何が私を変えたのか。その立役者がヨーグルトである。
小学3年の秋、母から薦められて中学受験をすることになった私は勉強に精を出すようになった。しかし、いざ塾に通いだすと小学校の勉強とはるかに乖離したレベルの授業に週1回のテスト、おまけに席順は成績の良い人から前に座るというストレスフルな日々が待っていた。私は心身が弱り今まで以上に風邪をもらうようになってしまった。するとしょっちゅうテストを休み、クラスの席順が後ろになることが増えた。こうなると塾の生徒から「おバカ」扱いされる日も近い。なにより授業についていけなくなっては大問題である。そこで母は実の父、私の祖父にあたる人に相談した。この祖父が、私の人生を大きく健康にした張本人である。
祖父は高度経済成長期を駆け抜けた証券マンで、休みは週1、しかもそれを接待ゴルフに充ててしまうという鬼畜なスケジュールを定年までこなしていたにもかかわらず、70代に突入してもなお病気一つしていないという鉄人だった。その化け物ぶりを支えていたのが、徹底した健康管理だった。様々な健康法を試して取り入れていた祖父は、子供の私でも出来そうな健康法として、ヨーグルトを食べることを紹介してくれた。
「プレーンのヨーグルトが身体にいい。でも、そのままだと酸っぱいだろうから、バナナとかレーズンとかを入れるとおいしくなるよ」
私は素直にそれを聞き入れ、母から出されたヨーグルトを毎日残さず食べるようになった。
しばらくすると、体調に変化が起こった。のどがかゆくならない。鼻から息を吸える。大抵風邪を貰っていた季節の変わり目になっても、だるさどころか鼻水一つ出ない。頭が冴えて、成績がぐんぐん伸びた。母は感動した。もしかしたら成人する前にどこかで風邪をこじらせて空に旅立っていくんじゃないかと本気で思っていたらしい。私は生まれ変わった勢いで受験を乗り越え、志望校に合格した。
すっかりヨーグルト信者になった私は、その後もヨーグルトを食べ続けた。そして中学と高校で皆勤賞という偉業を成し遂げたのである。大人になってつくづく思うが、身体は資本だ。健康でなければ楽しいものも楽しめなくなってしまう。しかし、その健康を保つのが難しいのも事実。それをヨーグルトで解決してくれた祖父は、数年前に空に旅立った。いつか誰かに健康法を聞かれたら、真っ先にヨーグルトを薦めるつもりだ。祖父の受け売りにはなるが、寛大な祖父ならきっと、許してくれるに違いない。
お読みいただきありがとうございました。頂いたご支援は執筆作業に行くカフェのコーヒー代として大切に使わせていただきます。