一言感想メモ (映画・本・音楽)
映画編
いとみち
言葉が必要なときに言葉が見つからない状態というのが、僕にとってもリアルな話だった。暗い部屋の中で三味線を弾くシーンがたまらなくかっこいいけど、同時になぜか切なかった。同じ店のメンバーや同級生の伊丸岡など、主人公の周りもいいキャラクターが多かった。勝手な思い込みかもしれないけど、三味線ってめっちゃロックかもしれない。
はちどり
「理不尽」がひとつのテーマだと思う。その中で登場する塾の講師のキャラクターが素晴らしくて救いだった。大きな理不尽は勝手に降り注いでくるし、小さな理不尽はどんどん膨らんでいく。自分のできる小さなことから抗っていきたいし、理不尽を再生産・継承しないようにしようと思える映画だった。
スパイの妻
観終わってみれば、自分にとってとても大切な映画だった。中盤までも素晴らしかったんだけど、終盤になって本当に「観るべき映画だった」とゾワゾワと鳥肌が立ちながら気づいた。好きすぎて、あまり語りたくないので、観てください。
マイスモールランド
今、たくさんの人に観てほしい映画だと思う。助かりたくてもその道を閉ざされてしまっている人たちが実は身近にいるということ。一見、周りから見て普通に見えても、重大で回避が困難な喫緊のリスクがあるということ。そして、そういう人に対するこの国のシステムの卑劣さがある。映画を離れてもこの物語は続いている。アクリル板越しの祈りのシーンがとても美しかった。
書籍編
ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい
主人公・七森が優しく、傷ついている人として描かれつつも、「ちょっとどうなの?」という行動もあったりして、読者のこちら側もおろおろしてしまうのが良かった。「打たれ弱い人を打つ方が悪いじゃん」と言う七森も正しいと思う。だけど、最後の一文を読んで白城の優しさの輪郭がなんとなく分かったような気がして、白城が主人公としても読める作品だと思い、いい意味でゾワッとした。白城を通して「やさしすぎる」という言葉が初めてフラットに近い感覚で受け止められた気がする。再読してそわそわ考え続けたい作品。
あのこは貴族
映画を観てから原作も読んだ。原作だと時岡美紀と相楽逸子が初めて会話するシーンがとても丁寧に書かれていた。ちょっとだけ不穏な空気もありながら、最後にコーヒーで乾杯するシーンは温かくて力強い。本来の順と逆だけど、映画の補足のような読み方もできて、あのシーンに温かみを感じたのはこういうことなのかな、と少し言語化できるようになったのが嬉しかった。
推し、燃ゆ
再読。1回目と印象が結構変わった。1回目のときは「危なっかしい」という印象が強かったけど、今回は、とても個人的で、小さい器の中で膨らみきった物語なんだなと思った。他のファンとの交流もネットの小さな世界の中だけだし、本当に主人公のあかりが"あかり自身"として推しを解釈しようといていたんだなと思う。こんなに孤独を守りながら推してたのすごいことだと思う。
音楽編
Y / 内山結愛
RAY の内山結愛さんのソロ曲。MV が公開された段階でもちょこっと触れたけど、音とリズム感に遊び心が満載で愉快な曲。サビの3連符で駆け下りるところが特に好き。同じ『I』に収録された『狂う』は「Falling into ruins」の歌い方が好きでたぶんこれからハマる。早見沙織さんの新譜『エメラルド』にも同じような音色が使われていてほっこりした (作曲者が同じ)。
本当のこと / わがつま
書籍編で紹介した『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』が映画化され、その作品の主題歌になっている曲。ボーカルとピアノだけの構成。どちらかというと感情を込めるというより淡々とした歌い方に聞こえるのだけど、ふんわり包み込まれるような感じがして不思議。ぬいぐるみと聴きたい曲だし、実際にぬいぐるみと聴いた。
春ノアト / Chouchou
サビを聴いたときに「あれ? このメロディ、最近聴いたことあるような……」と思ったら、同じ EP『明日、花嵐の向こう側で』の中に収録されている『ペタルレイン』と同じモチーフだった。こういう体を横に揺らしながら聴きたいポップチューンの曲、好き。
StrangeX / 楠木ともり
かわいい不思議感のある曲だけれども、2番に入った途端、ちょっと不思議を通り越して、ある種の不穏さを感じた。ここでは書かないけども、「こういうことなのかな……?」という予想は、ある。邪推になってしまうかもしれないけど、とても切実なものを、そのまま渡すと驚かせてしまうのでかわいくラッピングしたような曲なのかなと。楠木さんの曲はたぶん全部は追えてないかもしれないけど、抱えきれない言葉とか感情は音楽に乗せる人なのかな、と思った。