〝推し〟の声が出なくなった。
推しの声が出なくなった。
不調が出始めたのは、コロナで世の中が混乱するよりも前だったと思う。
声が出なくなる少し前、推しは肺腺がんを患った。
その時も、ヴォーカリストである彼は、どれだけの不安を抱えただろう。
2019年。わたしの推しバンドは『CROSS』というアルバムを、世界的音楽プロデューサーのスティーブ・リリーホワイトと共同で作った。その間も喉の状態は良くなかった。良くなかったどころか、かなり苦しんでレコーディングをこなした。
2020年以降、コロナ禍でたくさんのライブハウスが潰れた。
クラスターを生んだとして責められもした。
多くのアーティストは活動自粛を余儀なくされた。
音楽に関する催し物が行われなくなったことにより、音楽関係の仕事に就いてた友人は無職になった。
世の中は大混乱だった。
そんな中で、バンドは完成したアルバム『CROSS』を引っ提げ、全国ツアーを開始した。
もちろん、様々な感染症対策を施してかなりの緊張状態の中で行われた。
国の出す方針に従い、何度も延期になって、チケットの払い戻しやキャンセルも相次いだ。
だけどバンドは『こういうときだからこそ、エンタメを、音楽を止めてはいけない』とツアーを続けた。
そのような状況でヴォーカルは、自身の不調と向き合っていた。
ライブ中には、何度も声が出なくなった。
わたしの推しではほとんど見たことはないが、ライブの途中で声が出ないとき、ヴォーカルは、観客にマイクを向けて代わりに歌ってもらってその場を収めることがある。
しかしコロナ禍で、観客は〝マスク着用、声出し禁止。リアクションは拍手のみ〟、という厳しい中だった。
声の出ない推しを目の当たりにしながら、代わりに歌うことも、声援をおくることも出来ず、ファンも苦しかった。
数々の公演を延期したことにより、完走するまで、およそ二年を要した『CROSS』ツアーは、わたしにとって、生涯忘れられないツアーとなった。
ファイナルを迎えるまで時間はかかったけれど、その間、何度も会場に足を運ぶことが出来たし、困難な状況にあるにも関わらず、毎回感動体験をした。
ヴォーカルの声が出ないライブが不完全なものであるかどうか、判断するのは見る側に委ねられるところだが、わたし自身はそうは思わなかった。
バンドにはメンバーが五人いて、それぞれの魅力が際立った、わたしの推しだ。
彼らは演奏で語り、励まし、声を失ったヴォーカルのカバーをして、毎回素晴らしいステージを見せてくれた。
この『CROSS』ツアーでメンバーの絆はより深まったし、ライブをできることは、〝特別で幸せなこと〟だということを、改めてファン共々再確認した。
2022年。『CROSS』ツアーを終えたバンドは、ヴォーカルが声帯の手術を受けるために、一時的な活動休止を発表する。
声を一から育てていく覚悟で臨んだ手術。このことに関して、ヴォーカルは弱音を見せなかったが、本心を思うと胸が苦しくなる。
手術は成功し、無事に復帰を果たすも、2024年の現在も、かなり苦しい状況が続いている。
彼の声は戻っていない。それはもちろん、今後も元の声に戻ることはない。
手術が成功したから、あとは新しい声を育てるため、実践的に使うしかない。
だから、どんなに声が出なくても彼は今もステージに立ち続けている。
おそらく、久々に彼の歌を聞いた人は驚くだろう。
安定した音をとれない、高い声が出ない。今までの彼とは別人に感じる歌声だからだ。
それでも、およそ二時間のライブの中で、彼は必ず魅せてくれる。
ゾーンに入ったときの凄み、魂に訴えかけるものが、すべての不安を払拭して昇華する。
わたしはそれを観たい。
そして、それすら観られなかったとしても、絶望しない。
それは、彼らが常に音楽と真摯に向き合って、わたしたちにその真っ直ぐに生きる姿を見せてくれるからだ。
わたしの推しはかっこいい。超かっこいい。
いつでも別格の位置にいて、導いてくれる。
推しを推す仲間(親友)とは、彼ら(推し)が将来、天寿を全うしても支え合っていけるよう、強固な絆を築いている。そんな親友と出会わせてくれたものも、やっぱり推しなのだ。
ここからは、『ソウアイの星』のもとになった推しの楽曲の歌詞を紹介しながら物語を振り返りたいと思います。
その楽曲というのはLUNASEAの『LUCA』という曲で、アルバム『CROSS』の一曲目なのです。アルバムのリード曲であり、『CROSS』のライブツアーでは毎回オープニングを飾った、それはそれは大切な曲です。
『ソウアイの星』の主人公、流香の名はここから取りました。そして、流香の中に棲む友人ルナは言わずもがなLUNASEAからです。(照)
それでは『LUCA』という曲のどのような歌詞から小説のシーンをイメージしていったか解説します。
まずは歌詞の冒頭部分から。流香がCALETTeのライブを始めてみたときの衝撃をイメージしました。
出会いのシーン。ステージ上の朔也と流香は初対面でもなにかを感じ合い、互いに惹かれ合います。
輝く〝推し〟を見つけた流香の喜びをイメージ。
華に、流香が〝CALETTe推し〟を宣言するシーン。
朔也を夜の公園で見つけたシーン。手術に不安を抱える朔也を支えたいと強く願う流香の気持ち。
ルナと流香の口論のシーン。朔也をずっと見ていられるように〝ファン〟の立場を貫く流香の心をイメージ。
バンドの危機を支えようという、ファンとしての健気な気持ち。
ラスト、去っていった朔也を追う流香の心情。
〝ファンだから〟諦めない。どんなときも支え続けて、そこに喜びを感じる心理。
以上、LUNA SEA / LUCA より歌詞を引用をして、小説の全てを解説してみました。
「ソウアイの星」は、わたしが『LUCA』という曲から受けた勝手なイメージから創作しました。あくまで個人的なものです。
このことが著作権侵害に当たるのかどうか、ちょこっと心配なのでAIに訊ねてみました。
『ソウアイの星』を書くことは私の〝推し活〟であり喜びでしたが、今になって著作権に関して心配になってきました……。
このことに関し、詳しい方がいらっしゃいましたら助言をいただけますと助かります。
不安を残しつつ……
ここまで読んでくださった皆様には深く感謝を申し上げます。
最後に。
2021年8月1日に南相馬で行われたライブから『LUCA』です。
ライブの一曲目でありながらヴォーカルの声は厳しい状態です。サビは録音したものを重ねつつ、なるべく違和感がないように仕上げています。スタッフの努力にも感謝です。何度見ても感動してしまう大好きな動画です。
公式がこの動画を世の中に発表するという、その覚悟に惚れ直します°・*:.。.☆