毎週ショートショートnote | デジタルバレンタイン
遠い昔、「バレンタイン」という文化があった。年に一度とはいえ、その日を境に多くのカップルを誕生させた、画期的なものであった。らしい。
現在は、おみくじ感覚で恋の相手を見つける人が増えた。
今日、私はその会場に来ている。
「バレンタイン」というお見合いシステムを利用して、ぴったりと気の合う相手を見つけるのだ。
「はじめまして」
職員が引き合わせた相手と手を合わせる。
相手の温もりを手のひらに感じながら、気まずい時間を耐える。
「はい、もう離して大丈夫。あなたたちはカップルに最適。どうします?」
職員の圧が凄い。
「私は……引き受けます」
「それなら、ぼくも」
こうして私たちはカップルになった。
記念品を受け取り、会計に向かう。
すると、職員が慌てて追いかけてきた。
「数値、機械の故障でした。あなたたちは最適値まで微妙に足りていません。どうします?」
気まずさで思わず下を向く。私と彼は、繋いだ手の温もりを頼りに、互いの気持ちをはかっていた。
[完]
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