独女の夏 【ショートショート】
「あっつーい!ただいまぁ〜」
一人暮らしの家。誰もいないの。
だけど毎日、ちゃんと「ただいま」を言う私って、なんか“いい女”じゃない?なんて。
「やばい、汗すごっ」
半袖ブラウスを脱いでも、流れ続ける汗で、下着までぐっしょりだ。
私は躊躇なく下着を外す。
だって、一人だから。
「いやー、すごかったわぁ」
冷蔵庫の扉を開けて、外がいかに暑かったかを、冷えた食品たちに語りかける。
トップレス、缶ビール、つまみなし。最高!
一人暮らし、最高!
どんな格好でも、どんな適当な食事でも、誰からも何も言われないの。
最高!
「はぁ〜〜」
ベッドにもたれてスマートフォンをバッグから取り出したところで、インターホンが鳴る。
トップレス、缶ビール、どうしよう。
ネットでなにか買ったっけ?あ…あのサプリかもしれない。
悩んでいるうちに行ってしまう。
とりあえず返事を。
「…はい」
話しかけた。
少しして、ドア越しに男の声。
「ぜーんぶ、見えてますよ」
【完】
#夏だから
#怖い話