新入りは猫 【鳥獣戯画ノリ】
「調子にのるなよ」
なんて。言っても、どうせ俺の話なんてきいていないだろ。
少し前まで人見知り、引きこもりだったお前は、今ではすっかり朝帰りの常習犯じゃないか。
「毎日、どこへ行ってるんだよ」
「さぁな」
オスのくせに、長髪をさらっとなびかせて気取ってやがる。
嫉妬なんだろう。自分でもわかってるよ。
「昨日は何してたんだ」
「あ?」
面倒くさそうに頭をかいて、その手を舐め回す。どんなに擬人化したって、所詮お前は猫なんだよ。
「川下り、相撲取り。それから賭弓とウェイトトレーニング。夜はヨガ。明け方にランニングして帰ってきた」
「おいおい、どんなノリでそんなに夜通し遊び回れるんだ」
「鳥獣戯画ノリだよ。今流行ってるんだ」
「お前、俺の猫だろ」
「少し前まではな」
猫はポケットに手を突っ込むと、未開封のチュールを机の上に置いた。
「世話になった。もう行くよ」
止めても無駄、か。
わかったよ。
これでお別れだ。
あの絵巻物の中に、
お前も入っちまうのか…
[完]
#毎週ショートショートnote
に参加させていただいています。
今週のお題【鳥獣戯画】×【ノリ】で書きました。
今回は、井上涼さん作の「鳥獣戯画ジム」(びじゅチューン!より)という歌を思い浮かべながら創作しました。
鳥獣戯画ジム https://g.co/kgs/DcMqXx