ショートストーリー|生・環
霊ェさん、と呼ばれ振り向いた。つもり。カラダはない。
わたしはソラにいるのでしょうか。
シンデいるのでしょうか。
イキテ、いるのでしょうか。
「あなたのバン」
そう言ったのは、誰? わかりません。
アノ家、と示され視えてくる。
アノ家かあ。アノ夫婦ですか。
アノ、夫婦、なんですね……。
「ソウ。誰も選ぶことはデキナイの。ウンメイよ」
キビシイな。生。
「霊ェさん、あなたジンセイ何回目? 覚えてないかしら」
覚えていないですね。
覚えていないことに感謝しています。
なんて。
覚えていないのに。
「とりあえずイッテきて。あなたのタイミングでどうぞ。それだけはあなたのジユウだから」
徐々にカラダが熱くなる。
これが、セイメイの灯火?……
あの、わたし。
アノ家へ送られたら、たぶん、すぐに還ってくることになりますよ?
昨日のアノコみたいに。
とっても、傷ついて。
ぼろぼろに、なって。
「霊ェさん。あなた、ジンセイ28回目だって。大丈夫よ。行ってらっしゃい」
ええ。行ってきます。
イキテ、みますよ。
だけど最後に、昨日のアノコのことをもう少し教えてください。
いま、どうしていますか?
「アノコのことは大切に扱っています。キズを癒やして、キオクを消して。ウマレ変わるのですよ。これからも。ナンドでも」
そう、ですか。
ナンドでも。
キズをいやして。
「さあ、そろそろいいでしょう? アノ家をみて。あれがあなたの、ご両親となる二人。目をそらしてはいけません。受け入れなさい。ウンメイ、ですから」
わたし、もしかして今、泣いていませんか。
これは、なんのナミダでしょうか。
「カクゴを決めたナミダと受け止めます。さあ、あなたがここを発つのに必要なコトバを述べて。それは覚えているはずよ」
ええ。わすれていません。
アノ夫婦をしっかりと見つめて、こう言うんです。
「ワタシが、アナタ達を、選びました」