エッセイ|狂狂・喜怒哀楽
どうにも消化できない掌編を長く手元に置いていた。
中編にしてみようかと試みたこともあったけれど上手くいかなかった。それなら〝時が来るまで〟熟成させるしかないと放置してどれくらい経っただろう。
それを今回、うたすと2のイベントに「作詞をする」という役回りでお誘いいただいたことをきっかけに「歌詞」として消化することができた。
正確には、うたすと2用としてはボツ作品なのだけど、またしてもwsdさんがAI画像の研究材料に使ってくださったので有難いことに曲となった。
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曲に合わせて書いたわけではないので一文が長いし、堅苦しさは否めないけど、そこはなんとかなっているところがすごい。
私が書いた小説のタイトルは「狂狂・喜怒哀楽」。
元の文章は約2000字の掌編でわりと重い内容だった。その中に込めた想いはあるのだけど、どうにも人に伝わるまでの物にならなかった。
歌詞の場合は、小説以上に余白を許される気がしているのでこういう形になったのだけど、どうなのだろう。
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一言一言が感情を揺さぶる歌詞も好きだけど、全体が掴めそうで掴めない歌詞も好き。というか、私は曲を聞く時、かなり意識しないと歌詞を聴けないタイプなので好きとか嫌いとか言うのはそもそもおこがましい。
(20数年聞き続けている推しの曲だって、歌えるけど意味は理解していないし、歌詞カードも見ないので、ほとんどデタラメで歌っているという適当ぶり。私にとって音楽は全て〝音〟なのだ)
こういう告白をすると、私みたいな者が歌詞を書くなんてとんでもないな、と思うのだけど、今本番用に曲に合わせて文章を作っていて、ものすごく苦戦している。歌詞を書くことにしっかりと向き合っている。
「イメージがある」「のせたい想いもある」、だけど、ぴったりの言葉を見つけるのに時間がかかっている。
結果、私は今ものすごく楽しんでいる。
「狂狂・喜怒哀楽」(歌詞バージョン)
なんでもない 日常の中
その鳩に会った
何かをついばむ その鳩には
羽毛に包まれた 柔らかな
自殺願望がある
足に穴のあいた
ショートパンツの女の子
機嫌よく微笑んでいる
その穴に興味がある
仄暗い 秘密のトンネルを抜けて
踊り狂う あなたの内側を見たい
六本木のコールドストーン
アニメ声で歌っていた
あの子は
男だったかしら
笑顔で 両腕を前に突き出して
白い歯を見せる
嘆きながら 笑い
ビルから飛んだ あの子
人はファンタジスタになんて
ならない
何を 間違えた?
決まってる
喜怒哀楽の選択だよ
死にそこねた 鳩は
私を睨んで 嬉しそう
間違えたと 泣き笑いした
あの子
そう あのからだ
あの震えていたぬくもりは
どこへ還っていった
ファンタジスタ? 女? 男?
もう誰も 覚えてないよ
了
wsdさんに曲をつけていただいたシリーズです↑