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不確かな世界で輝くために|私立恵比寿中学が証明する本物の強さ

13年前、高校生だった私は、
その時まだiPhoneを持たせてもらえずに、
iPodで音楽を聴いていた。

ちょっとしたきっかけでクラスで居場所がなくなった時、有線イヤホンから流れる音楽は、
私を別の世界に連れて行ってくれた。

とことん落ち込んだ時に、
私に元気をくれたのがアイドルの存在だった。

応援していたアイドルのひとつ、
「私立恵比寿中学」との出会いは、
私の人生に大きく影響を与え、いわゆる”沼にハマった”と言っても過言ではない。

好きなアーティストはいるの?
その問いに、
「アイドルが好きなんですが、
多分知らないと思います…。
ももクロの妹分で…。」と、
遠慮がちにいつも答えているけど、
今日はnoteの企画に便乗して、存分に語らせてもらう。


最新のアーティスト写真

私立恵比寿中学、通称「えびちゅう」は、
「永遠に中学生」をコンセプトした、女性アイドルグループだ。今年で15年というアイドルグループの中でも長期間にわたった活動を続けている。

公式より平仮名表記の「えびちゅう」を略称にすると発表されてからも、私の中では「エビ中」の方がしっくりくるので、この後もエビ中と表記させてもらう。
(…どっちでもいいですよね、わかります)

結成当初は「King of 学芸会」というコンセプトのもと、キレのないダンスや不安定な歌唱力、なんて揶揄されていたが、地道な努力の結果、現在ではアイドル界でもトップレベルの歌唱力と表現力と言われている。

現在のメンバーは9人。
これまでにたくさんのメンバーの移り変わりを経て今のエビ中があり、過去のメンバーもエビ中を語る上で欠かせない存在だ。

先に話したように、
エビ中は私の人生に大きな影響を与えた。

そして、エビ中の歩んできた歴史をファンとして見守る中で、一番エビ中から感じたことは、「どんな時でも、前を見続ける強さ」だ。

高校生の頃、エビ中に出会った私は、
その天真爛漫さと、一生懸命に歌い踊る姿に魅了された。そのひたむきで一生懸命輝く姿は、多くの人が思わず応援したくなる魅力があった。

現在では椎名林檎や大森元貴(Mrs. GREEN APPLE)、川谷絵音(ゲスの極み乙女)、尾崎世界観(クリープハイプ)、石原慎也(Saucy Dog)など、数多くの有名アーティストから楽曲提供を受けている。
エビ中の表現力の高さを、多くのアーティストが認めている証拠であるとも言える。

椎名林檎が好きだった私が心から喜んだ、
「自由へ道連れ」のカバー。
楽曲のリスペクトを感じるし、エビ中なりのオリジナリティで色付けをして、自分達の曲として昇華させている。


高校生だった私が、メンバーの中で惹かれたのは「松野莉奈」。愛称は「りななん」だ。
いわゆる”推し”。

麗しきりななん

すらっと背が高く、美人で大人っぽい顔立ち、
それなのに子供らしくあどけない性格で、
メンバーとじゃれ合う姿が可愛らしかった。

歌は苦手だけど、丁寧に表現する努力型。
低音ボイスを活かしたパートは
エビ中楽曲のアクセントになっていた。

イベントにも足を運び、本物のりななんが
歌って踊る姿が、豆粒サイズにしか見えなくても感動するくらい素敵だった。


ある日の高校からの帰り道、
いつも通り、ふとSNSを開いた。


「松野莉奈 急死」という
不自然な文字列が目に飛び込んできた。
2017年2月8日のことだった。

にわかには信じられないことに、
フェイクニュースだと本気で思った。
数日前まで、写真や動画の中で満面の笑顔で元気そうにしていたからだ。

それが、現実と知った時、
どうして、と泣き崩れた。

悲しみが押し寄せるのと同時に、メンバーへの心配も頭に浮かんだ。当時、りななんは18歳。メンバーも変わらない年齢だ。


しかし、メンバーは私たちの想像以上に強く、前を向いていた。

数ヶ月後に、予定通り開催された春ツアーを走りきり、ツアーのメイキングムービーの中で、
メンバーの安本彩花(愛称:あやちゃん)は、
「客席に、りななん推しの人がいて、泣いているのが見えた。途中から、その人を笑わそうと思ってパフォーマンスをした」
と語っている。

メンバーは悲しんでも悲しみきれないほどの思いだろうに、驚いたことにファンの心配までしていた。

ツアーファイナルでは、りななんに向かってメッセージを伝え、
「泣かずに最後まで言えたよ!」と報告するシーンが心に残っている。あやちゃんは、りななんと同い年、親友だった。

私にとって莉奈との別れは人生において超えることはないぐらいの衝撃があったし、自分を本当にいろんな意味で変えた出来事なので。今思うとそれをきっかけに、私にとってすごく大事なものを与えてくれたんだなって。そう思うとなんか、まあ複雑だけど、ありがとうって気持ちもあって。でもその当時はでもその当時はハチャメチャでしたね、頭の中もぐちゃぐちゃでした。

IDOL AND READ 030 安本彩花

そして数年後、
私はあやちゃんを推すことになる。

しかし、弱かった私は、どうしてもエビ中を応援するのが辛くなってしまい、一度離れてしまった。陰から応援しながら、少し心の距離を置くことにしたのだ。


その間に、あやちゃんは悪性リンパ腫と戦っていた。

ちょうど、世間はコロナ禍。先の見えない不安が社会全体を覆っていた。
そんな中、彼女は体の違和感に気づく。
病院を受診しても原因が見つからぬまま、それでも自分に死が迫っていることを悟りながら、ライブのステージに立った。

そして幾度かの検査の末に、2020年10月に悪性リンパ腫ステージ4と診断され、治療に専念すべく当面の間休養することが発表された。

ちょうどその頃、彼女は自立をしようと、一人暮らしを始めたばかり。そのため、体調の異変に気づいてもすぐに誰かに相談することができず、家族やメンバーとも連絡を絶ってしまったようだ。

日に日に悪化する症状に耐えながら、
「もしかしたら自分は死んでしまうかもしれない」という恐怖を、約1ヶ月間ひとりで抱え続けていたという。

エビ中に命を賭けるほどの覚悟を持っていた彼女だったが、
ついには「グループを辞めようか」と持ちかけられたとき、迷うことなく「はい」と答えてしまうほど、心が追い詰められていた。

それでも、どうしてもエビ中に戻りたい、もう一度歌いたい、その強い想いを支えに、乗り越えていった。

自身の病気が発覚して休養する直前の2020年10月10日に行った、生誕ソロライブ。
私はその時のライブ映像が忘れられない。

病の恐怖に蝕まれながらも、自分を奮い立たせるかのようにアカペラで歌う、自身のヒューチャー曲「ジャンプ」。

その歌詞の中の「今だ」は、本来なら叫ぶように歌う場面。
しかしこの動画での「今だ」は、もう一生ステージに立てないかもしれない、何なら自分の人生が終わってしまうかもしれないから、
”今やるしかない”という彼女の覚悟のような気持ちが感じ取れる気がする。


そして、闘病の末、またエビ中に戻ってきてくれたあやちゃんが登場した「THE FIRST TAKE」は、また私をエビ中の沼に引き戻すきっかけとなった。

この楽曲「なないろ」=716=7月16日は、りななんの命日だ。

あやちゃんは闘病中、挫けそうになった時は、りななんのことを思い出して何度も元気をもらったと語っている。そんなメンバーが再スタートするのにぴったりな楽曲。

目を合わせながら、丁寧に歌い紡いでいくメンバーの姿。最後のあやちゃんの一言で、メンバーの緊張がほぐれる瞬間。

これこそが、私立恵比寿中学だ。

苦難を乗り越えて、何度も何度も再スタートする。いつでも前を向き、パフォーマンスで、歌で、私たちを元気づけてくれる
エビ中の「どんな時でも、前を見続ける強さ」に私は何度も何度も驚かされている。

もうひとつの「THE FIRST TAKE」は、6人での「ジャンプ」の歌唱。休養前のあやちゃんとはまた違った、力強い表現が、どこかで自分と同じように辛い思いを抱える人に届けと言わんばかりだ。


そんなエビ中は、現在9人体制。
先ほどの「THE FIRST TAKE」のうち、
4人が現メンバーとして活動している。

もちろん私の推し、あやちゃんもだ。

最近のアー写。美しかわいい。

圧倒的な歌唱力と表現力、パフォーマンスはイケイケなのに、トークになると突然ふわふわした雰囲気を醸し出すそのギャップ。

笑うとほっぺに猫のヒゲのようなエクボができるのも可愛いし、ライブで水を浴びると、赤ちゃんのようなぺたっとした髪型になるのも可愛い。

とにかく推しは、全てが尊い。

最近、公式からアップされたライブ動画、
「君のままで」を見てほしい。

”笑えない日だってあるけど
君の全てが明日をてらすから”

”笑いあった いくつもの
思い出や 切ない痛みも
忘れないよ この空に色を添えて”

”こぼれそうな涙拭う手
君のぬくもり
すべて知ってるから”

私立恵比寿中学「君のままで」より

ちょっとくさい歌詞も、エビ中が歌うことによって全て胸にスッと入ってくる。何より、あやちゃんが歌うことに心を打たれる。

エビ中の自己紹介楽曲の歌として知られるエビ中出席番号の歌 その3」。
その歌詞の中で、彼女はこう歌っている。

あれもこれもやりたい
人生めちゃたのしいわー!

「エビ中出席番号の歌 その3」より

失った時間を取り戻すかのように、やりたいことにたくさん挑戦する彼女の姿は眩しい。

あやちゃんの人生がめちゃたのしくて、
オタクは、泣くほどに、嬉しい。


これ以外にも、メンバーの病気や事故など、どうしてエビ中だけが?と思うような多くの災難に見舞われている。
そんなエピソードは表にほとんど出さず、
何度も手を取り合い、高みを目指して、泥臭く努力をし続けるエビ中。

エモーショナルなLIVEパフォーマンス。胸を打つ歌声。魂を込めたダンス。全力でぶつかる姿に、嘘偽りのない純粋さを感じる。
映像に残された彼女たちの歌声、ステージ上での姿、そのすべてが真実だからこそ、ただ目にするだけで、歌声を聴くだけで、涙が出てくる。

もはやアイドルという枠を超え、アーティストとしての存在感を確立している。メンバー間の絆、試練、葛藤、別れ…そのすべてを乗り越えて、なぜ彼女たちは今も走り続けることができるのか。
エビ中を知った人は、その背景と理由をするほどに、彼女たちの沼にハマっていく。

アイドルとは、ひたむきな努力を積み重ねる職業だ。成功の形は見えず、何が正解かもわからない世界。それでも歌い、踊り、ひたすら努力を重ねる。

でも、ただ上手いだけでは売れるわけでもない。

それでも、人生の最も輝く10代、20代のすべてをステージに捧げる。
その覚悟と情熱こそが、彼女たちの強さだと感じる。

エビ中は、一人のメンバーが卒業した転換期の際に、もう一度“さいたまスーパーアリーナ”の舞台に立ちたいと目標を語った。

その目標が、今年の3月20日、
叶うことになる。

きっと、またエビ中の新たな歴史に立ち会うことになるだろうと思うと、今からワクワクする。年々進化を遂げているエビ中は、いつも大切な場面でこう言う。
「最新の私立恵比寿中学が、最高の私立恵比寿中学」

環境や自分自身が変化していくことは怖い。
私もずっと今の生活を続けていたいし、
何不自由ないからこのままでいいと動き出せずにいる。

でも、彼女たちは変化していくことを恐れない。そうやって、いつも私たちを驚かせてくれる。

なんとなくでアイドルを始めたから、やりたいことも伝えたいこともなかった。周りの大人やファンに支えられて、『あやちゃんにはあれが向いてるんじゃない?』『これが素敵だよ』っていろんな言葉をかけてもらって、自分が形作られていった。ありがたいことだけど、ある時からそれが悔しくなった。
20歳くらいから徐々に変わりたいと思うようになって、それで曲を作るようになった。1から自分で作ってみたいって。そこから少しずつ変われた。
『あやちゃんは強いね』って言ってもらえるけど、それは昔はそうじゃなかったから。自分の理想像、理想とする人になりたくて、少しずつ変えてきて、自分でやりたいこと、伝えたいことができてきた。
だから私より年下の子や同世代の人、あるいは先輩方でも、今自分に自信がないなって人は、何か新しいことを始めてみてほしい。
私はそうやって変われたから。それが今伝えたいメッセージです。

生誕ソロライブ #安安

私はこれからどんなことがあっても、逃げずにエビ中と向き合い、彼女たちが走る先を見守っていきたい。そして、彼女たちがする選択を、全て受け入れ、応援していきたい。

どんな未来が待っていても、
彼女たちならきっと大丈夫。
そう思えるようになったから。


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