猫背などの不良姿勢とゴルフパフォーマンスの関係
こんにちは!
いつもご覧いただきありがとうございます!
今回の記事は、姿勢が悪いことでゴルフパフォーマンスにどう影響するのかについて書きました。
姿勢が悪いとゴルフスイングに悪影響を及ぼしそうだなぁと、なんとなくは分かるかと思います。本記事では、そのなんとなくを詳しく解説していきます。
普段から姿勢が悪い自覚があったり、周りの人から姿勢が悪いと指摘される方は結構多いのではないでしょうか。現代人はデスクワークで長時間座りっぱなしであったり、1日の中でスマホを見る機会が多いため、姿勢が悪い方がたくさんいます。
良い姿勢は日頃から意識していないと中々作れないですし、ずっと意識していることはかなり難しいですよね。
そして、姿勢が悪い状態でゴルフをすると、うまく身体を回せなかったり、怪我に繋がる可能性が増えてしまいます。逆に、姿勢が良くなれば、ゴルフのパフォーマンスが上がる可能性が増え、怪我をするリスクも減少します。
また、姿勢が良くなると、ゴルフのパフォーマンス向上だけでなく、日常生活にもいい影響をもたらします。
例えば、見た目が良くなることで若々しく見えたり、肩こり、腰痛、膝痛の改善などがあります。
私がトレーニング指導している方で姿勢が悪い方はかなり多いです。むしろ普段からトレーニングをしていない方で姿勢が良い方はほとんどいません。
そのような方々でもトレーニングをすることによって、姿勢が良くなり、ゴルフのパフォーマンスが上がっています。
そして、今回は専門的な内容が多いため、前半は少し難しいかもしれません。
前半の内容は不良姿勢についての説明なので、ゴルフと姿勢の関係について知りたい方は、目次の『不良姿勢がゴルフにどう影響するのか』にお進みください。
姿勢の種類
そもそも理想的な姿勢とはどの様な状態なのでしょうか。また、姿勢が悪いといっても種類はいくつかありますので、今回は代表的なのもの紹介していきます。
(*今回の記事は不良姿勢をいくつかピックアップしておりますが、一つひとつの不良姿勢の改善方法を説明していくのは本記事の趣旨とずれてしまうため省かせていただきます。各不良姿勢の改善方法については、また別の記事で書かせていただきます。)
猫背の人は猫背の部分だけが悪いのでは無く、骨盤の傾きや股関節などにも悪い部分がある可能性があります。これはどの不良姿勢でも言えることですが、姿勢を見るときは1箇所だけで症状を捉えずに、全身で考えることが重要です。
そして、姿勢改善に対するアプローチについても同様です。例えば肩が前に出てるから肩周辺にアプローチするだけで無く、全身をみて悪いところへアプローチすることが必要です。
姿勢を改善するためには、まず理想の姿勢を知ることから始めると、姿勢改善のイメージがしやすいと思います。
では、まず理想的な姿勢について見ていきます。
理想的な姿勢
理想的な姿勢は、横から見た時に耳から外くるぶしまでが一直線になっている姿勢です。
具体的には上から
①耳たぶ
②肩の先端部(肩峰)
③太ももの骨の出っ張った部分(大転子)
④膝のお皿
⑤外くるぶし
が一直線になっている状態です。
背骨には正常な湾曲(脊椎のS字カーブ)があり、壁を背にして立つと腰と壁の隙間に手のひらが収まります。
<脊椎のS字カーブ>
脊椎とは、背骨を構成する一つひとつの骨のことです。
脊椎は、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾骨から構成されています。
脊椎と脊椎の間には椎間板という特殊な軟骨が存在し、クッションの役目を果たし、さらに背骨に動きを与えています。
そして、脊椎は重たい頭を支えるため、適度なS字カーブを描いています。これを脊椎の生理的湾曲といいます。
具体的な脊椎の湾曲は、
頚椎は前弯(前側へ湾曲している)
胸椎は後弯(後側へ湾曲している)
腰椎は前弯(前側へ湾曲している)
となっています。
脊椎の湾曲は、加齢や筋肉、関節、結合組織などに障害があると、正しい姿勢が取れなくなり、不良姿勢となってしまいます。その結果、脊椎の湾曲が強くなったり、少なくなったりしてしまいます。
不良姿勢の原因
不良姿勢のきっかけは、日常生活での癖であったり、デスクワークなどで同じ姿勢をとり続けることで筋肉が緊張することや、楽な姿勢を取り続けたために本来使うべき筋肉が使われず弱くなることで生じます。
また、筋肉の緊張は怪我や、スポーツなどで一定の場所に負荷がかかることでも生じます。特に、ゴルフでは片側への回旋を繰り返すため、左右の筋肉の緊張度が変化して骨格の歪みが出る可能性があります。
不良姿勢は、その人のライフスタイルによって左右されるため、腰が反っている人もいれば、背中が丸まった人も人もいます。そのため、その人の姿勢の特徴に合わせたトレーニングやストレッチを行わないと改善されません。
姿勢が悪くなるのは、筋肉の緊張によって収縮が続いた状態になってしまう筋肉(短縮している筋肉)と、筋肉が常に引き伸ばされて筋力が低下している筋肉のアンバランスによって生じます。
例えば猫背の人だと、胸の前の筋肉の緊張が強くなっていて、逆に背骨に着く筋肉(脊柱起立筋)の筋力低下が起きていることになります。
つまり、姿勢の改善には短縮している筋肉にストレッチやマッサージなどを行い、筋力が低下している部位の筋力強化をすることが必要となります。
ただ、全ての姿勢でアプローチが同じわけではありません。不良姿勢の一つひとつで対象となる部位が違いますので、その姿勢に合わせたアプローチをしていきます。
では、ここからはよく見られる不良姿勢の種類を説明していきます。
不良姿勢1:後弯前弯型(kyphosis-lordosis posture)
この姿勢で特徴的なのは、骨盤が過度に前傾していることです。
骨盤が前傾していると、壁を背にして立ったときに腰と壁の間の隙間が広くなりますので、チェックしてみてください。
1.この姿勢の特徴
理想的な姿勢と比較して、以下のような特徴があります。
・頭部前方位(頭が前に出てる。耳たぶが肩峰より前方に位置する)
・胸椎の後弯増強(脊柱の胸部の湾曲が強くなる)
・腰椎の前腕増強(脊柱の腰部の湾曲が強くなる)
・肩甲骨が外に広がる
・骨盤が前傾する
・股関節が曲がる(股関節屈曲)
不良姿勢2:後弯平坦型(sway-back posture)
この姿勢で特徴的なのは、骨盤が後傾していることです。
骨盤が後傾していると、壁と腰の隙間がほとんどなくなります。
1.この姿勢の特徴
理想的な姿勢と比較して、以下のような特徴があります。
・頭部前方位(頭が前に出てる)
・顎が前に出る
・胸椎の後弯増強(脊柱の胸部の湾曲が強くなる)
・骨盤後傾位
・骨盤が前方へ出ている
この不良姿勢は現代人では最も多いです。
特に、デスクワークをしている人がなりやすい姿勢です。
不良姿勢3:平背型(flat-back posture)
この姿勢で特徴的なのは、本来湾曲しているはずの腰椎に湾曲が見られないことです。(脊柱の正常なS時カーブが見られない)
腰椎に湾曲がないと、衝撃吸収作用が低下して損傷を受けやすくなります。
1.この姿勢の特徴
理想的な姿勢と比較して、以下のような特徴があります。
・頭部前方位(頭が前に出てる)
・顎が前に出る
・胸椎、腰椎が平坦
・骨盤やや後傾位
不良姿勢がゴルフにどう影響するのか
上記のような不良姿勢がゴルフパフォーマンスにどう影響していくのかを説明してしていきます。
関節可動域への影響
ゴルフは身体を回旋させるスポーツですが、姿勢が悪いと身体を回旋させにくくなってしまいます。
ゴルフスイングでは、下半身の力を体幹部、腕へと順に伝えていく必要があります。スイング動作をスムーズに行うためには各関節の可動域が必要となります。その中でも特に重要なのが股関節・胸椎・肩関節ですが、今回紹介した不良姿勢では、股関節、胸椎、肩をしっかり動かせなくなり、身体を思うように回旋できないことはもちろん、怪我にも繋がってしまいます。
例えば、ゴルフスイングの際に、本来では胸椎、股関節をメインに回旋させますが、胸椎、股関節の可動域が低下していると腰椎で代償して回旋させなくてはならなくなります。腰椎は関節の構造上5°程度しか回旋可動域はありません。そのため、本来殆ど回旋しない腰椎を回旋させることで腰痛に繋がってしまいます。
これについては詳しく書いた記事がありますので、そちらをご覧ください。
外腹斜筋との関係
本記事で紹介したような不良姿勢では、外腹斜筋の筋力低下を起こしやすくなっています。
外腹斜筋は、骨盤前傾、後傾どちらでも筋力低下しやすいです。
外腹斜筋は、体幹部を回旋させる時と、体幹部の回旋を制動する役割があります。
右打ちのゴルファーでは、スイングで勢いよく体幹を回旋した際に、それを左の外腹斜筋で制動する必要がありますが、外腹斜筋の筋力低下が起きていた場合、制動できずに腰痛をきたすことがあります。さらに、股関節の内旋制限があると症状は悪化します。
そのため、姿勢が悪いゴルファーは外腹斜筋の筋力を向上をさせないと、腰痛になる可能性が増えてしまいます。
頭部前方位と猫背
本記事で説明した不良姿勢の全てで共通しているのは、頭部前方位(頭が前に出ている)と、猫背(胸椎後弯)の状態です。この姿勢は、デスクワーク時やスマホを見る時に、長時間前屈みの姿勢でいることで生じます。
また、この姿勢では、胸の筋肉(大胸筋、小胸筋)が固まり、背中の筋肉(僧帽筋中部、下部繊維)の筋力低下が起きることで、巻き肩になったり、肩こりや胸郭出口症などを発症することがあります。(*胸郭出口症とは、腕の神経や血管が圧迫されて手が痺れてしまうものです)
そして、この頭部前方位と猫背は、スイングのエラーが出てしまう原因となります。
スイング時のエラーとしては、
①スイングが小さくなる
②手打ちになりやすい
③腰痛などの怪我に繋がる
④ヘッドスピードが遅くなる
⑤ダフリ など
以上のようなものがあります。
これらは、頭部前方位や猫背のために、身体の回旋可動域が制限されることで生じます。
背中が丸まっていることで、スイング時に胸椎を回旋させづらくなったり、肩を適正の可動域で動かすことができなくなります。胸椎の回旋が出ない時に、脳は他の部分で代償して体を回旋させようとします。
例えば、胸椎ではなく腰椎を回旋させてしまったり、背中を反らせるようにして体を回旋させてしまうなどです。これらは、手打ちになったり、飛距離が出ないだけではなく腰痛、肩痛など様々な弊害が出ます。
胸椎をしっかり回旋させるには、胸を開いて背筋を伸ばすことが重要です。
これは椅子に座って、体幹部を回すと分かりやすいので、実際にやってみてください。
まず椅子に座って、背中を丸めたまま体幹部を回してみてください。ほとんど回せないと思います。
次に背筋を伸ばした状態で体幹部を回旋してみてください。胸を丸めた時よりもかなり回しやすくなったと思います。
このように、背中が曲がっているだけで回旋の可動域がかなり制限されることが分かります。
頭部前方位と猫背の改善方法
それでは最後に頭部前方位と猫背、巻き肩の改善方法のエクササイズを紹介しますが、エクササイズと同時に日頃から理想の姿勢を意識して生活することがとても大切です。
気が付いたら姿勢を正すようにクセをつけましょう。
姿勢改善エクササイズ
1.大胸筋、小胸筋のストレッチ
・四つん這いになり、手をついたままお尻を後ろへ突き出します。
・この時胸の前が伸びる感じがあれば大丈夫です。
・息を止めないよう30秒を2セット行いましょう。
2.首の運動
・頭を後ろへ引き寄せると同時に顎を喉に引き寄せます。
・頭を引き寄せると同時に、肩甲骨を寄せて胸を張ります。
・腰が反らないように注意しましょう。
・20回を2セット行いましょう。
3.肩甲骨を寄せる運動
・体の前で両手を近づけて、肘を曲げたまま横へ広げます。(正面から見てWの形を作ります)
・肘を広げる時に肩甲骨を寄せるよう意識します。
・余裕があれば、Wの形だけでなく両手をバンザイしたYの形と、手を横へ広げたTの形でも行うとより良いです。
・肩甲骨周りを使う感じがあれば大丈夫です。
・初めは10回でも疲れると思いますので、慣れてきたらW、Y、Tの形でそれぞれ20回を目指しましょう。
少し長めでしたが、最後までお読みいただきありがとうございました!
少しでも、ゴルフライフに役立てていただければ幸いです。
また、ゴルフパフォーマンスの向上には、姿勢改善も必要ですが、スイングで使われる筋肉を鍛えることも重要です。これについては下の記事を是非ご覧ください。
では、また次回の投稿でお会いしましょう!
作者プロフィール
参考文献
・岩本潤「ゴルフ障害・外傷の疫学」『臨床スポーツ医学 』vol.33 No.3
・鈴木一瑛、浜田純一郎「ゴルフにより生じる障害・外傷」『臨床スポーツ医学 』vol.33 No.3
・・Paul J. Read,1 MSc, CSCS Rhodri S. Lloyd,2 PhD, CSCS*D. Strength and Conditioning Considerations for Golf. NSCA JAPAN
Volume 23, Number 10, pages 37-44
・竹井仁「姿勢の教科書」株式会社ナツメ社2017.1.10
・広瀬統一、泉重樹、上松大輔「アスレティックトレーニング学」文光堂2019/12/23