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非認知能力にはどのような能力がある?【思考力再考】
どうも、あおきです。医学部でコミュニケーション教育と心理学教育を行っている研究者兼心理カウンセラーです。今日は「非認知能力に含まれる具体的な能力」についてお話ししてみようと思います。最近、この「非認知能力」という言葉を耳にする機会が増えていますが、具体的にはどのような力が含まれているのか、心理学的な視点から考えていきます。
まず、「非認知能力」という言葉の背景からおさらいしておきます。非認知能力とは、いわゆるテストで測れるような知識や計算力といった「認知能力」とは異なり、人間関係を築く力や感情をコントロールする力、困難に向き合う力といった「人間らしい行動や態度」に関わる能力を指します。学校や職場で評価されるのは、いまだに認知能力が中心ではありますが、人生の満足度や成功に寄与するのはむしろ非認知能力だと言われています。
では、具体的にどのような能力が「非認知能力」に含まれるのでしょうか?
ひとつ目に挙げられるのはグリット(やり抜く力)です。グリットとは、心理学者アンジェラ・ダックワースが提唱した概念で、困難や挫折に直面しても目標に向かって粘り強く努力を続ける力を指します。たとえば、勉強やスポーツで成果を出すためには、才能だけでなく、コツコツと続ける力が必要ですよね。グリットが高い人は、自分の目標を明確に持ち、その達成に向けて努力を惜しまない傾向があります。
次に、自己制御(セルフコントロール)も重要な非認知能力です。自己制御とは、自分の感情や衝動をコントロールし、長期的な利益のために短期的な欲求を我慢できる能力を指します。たとえば、友達と遊びたい気持ちを抑えてテスト勉強を優先することや、お菓子を食べ過ぎないようにすることなどが自己制御の一例です。自己制御が高い人ほど、健康的な生活を送りやすく、学業や仕事でも成功しやすいことが知られています。
三つ目は、共感力(エンパシー)です。他人の気持ちを理解し、相手の立場に立って考えられる能力は、人間関係を築くうえで欠かせません。共感力が高い人は、相手の話を丁寧に聞き、適切な反応を示すことで信頼関係を構築します。たとえば、友人が落ち込んでいるときに「何かできることはない?」と声をかけたり、職場で同僚のストレスを察して手助けするような行動が挙げられます。
四つ目の非認知能力として感情調整(エモーションレギュレーション)が挙げられます。これは、自分の感情を適切に認識し、それを調整して行動につなげる力です。たとえば、プレゼンの直前に緊張しても、「緊張しているけれど、これをうまく乗り越えれば成長できる」と自分に言い聞かせることができれば、パフォーマンスに良い影響を与えるでしょう。感情調整がうまくできる人はストレスにも強いとされています。
次に、社会的スキル(ソーシャルスキル)も非認知能力の一部です。他者と円滑にコミュニケーションをとり、協力しながら目標を達成する力は、学校や職場などさまざまな場面で必要になります。たとえば、グループワークで意見が対立したときに、相手の意見を尊重しながら調整役を務められるようなスキルがこれに該当します。
そして、自己効力感(セルフエフィカシー)も重要です。自己効力感とは、「自分はこの目標を達成できる」と信じる力のことで、心理学者バンデューラによって提唱されました。この力が強い人は、自分に自信を持ち、失敗を恐れずに挑戦することができます。逆に、自己効力感が低いと、自分に自信が持てず、困難に直面したときに諦めてしまいやすくなります。
さらに、好奇心や創造性も非認知能力の一部です。新しいことを学びたいという意欲や、既存の枠組みにとらわれずに新しいアイデアを生み出す力は、学びや仕事だけでなく、人生そのものを豊かにしてくれる要素です。たとえば、好奇心旺盛な人は、新しい趣味やスキルに挑戦することで自己成長を遂げやすくなります。
こうして見ると、非認知能力には多くの具体的な力が含まれていることがわかります。これらの能力は、テストや試験で評価されることは少ないかもしれませんが、私たちが人生を豊かにするためには欠かせないものです。そして、それらの力を育むには、日々の生活の中での体験や人間関係が重要な役割を果たします。
最後に、非認知能力の特性として、これらの力は一つ一つが独立しているわけではなく、相互に影響し合っている点が挙げられます。たとえば、自己効力感が高い人は、失敗しても粘り強く努力を続けることができ、感情調整のスキルも高まるでしょう。また、共感力が高い人は、他者との協力を通じて社会的スキルを磨く機会が増えるかもしれません。
こうした非認知能力を意識しながら、自分の中で育てていくことは、人生をより充実させるための一歩になります。非認知能力について考えることは、自分の行動や選択を見つめ直す良いきっかけになるかもしれません。
それでは最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!