プラモデル、水性塗料移行計画
今年やりたかったことの一つに、「プラモデルの塗装を水性アクリル塗料*メインへ移行すること(を試すこと)」があります。
前回書いた通りオフシーズンになったので、いくつかのキットで、サフも基本塗装も水性塗料を試します。
*プラモデル用の水性塗料の呼称は様々ありますが、クレオスの水性ホビーカラーとタミヤのアクリル塗料を念頭に、水性アクリル塗料、または水性塗料と表記しました。
水性塗料との付き合いは長く、子どもの頃は基本塗装は専らタミヤアクリル塗料を使い、戦車の迷彩の細吹きにもエアブラシで使ったりしていました。社会人になってプラモデルを再開してから徐々にラッカー系塗料**を用いるようになり、昨年からサフと基本塗装は専らラッカー系となっていました。
**最近の模型誌では、厳密にはラッカー樹脂を用いていないことからか、「ラッカー系」と表記されているのを見かけます。その他、「エナメル系」「アクリル系」も。あまり厳密さを求めないほうが健康的でしょうから、妥当な表記だと思います。
水性塗料メインに戻そうと思い立ったきっかけは、やはりラッカー系塗料の臭いと有害性です。
一度塗装を始めるときつい臭いが部屋に充満し、防毒マスクなしではいられません。ラッカーシンナーの心身への負担は、水性やエナメル系塗料よりも、大きいと感じます。
保管時にも瓶から臭気が漏れ出てくるので、塗装をしなくても、定期的に換気が必要です(換気には、部屋の窓に別付けの換気扇を設置。塗装時は塗装ブースのダクトの口をその換気扇に沿わすようにしています)。私はラッカー系塗料のびん数十個をプラケースに入れていますが、ケースの蓋を開けると、臭気がもわっと出てくるので、普段から相当量は漏れ出ていると判ります。
塗料の溶剤以上にやっかいなのが、ツールクリーナーです。さらに臭いがきつい。最近は低臭のものを買っていて、これだと通常のシンナーよりもだいぶマシになります。(しかし低臭だからといって有害性まで低減されたわけではないでしょう。このツールクリーナーは水性塗料を使う際にもお世話になります。この問題は別項としてさらに追求したい)
ラッカー系は基本塗装の時にエアブラシか缶スプレーで使用しますが、一時間、長い時で二時間は使います。そのさい3Mのデュアルタイプの防毒マスクを使用していて、これなら臭気もまったく吸わず、長時間でも呼吸が楽です。マスクで臭いを防げても、バンドで頭をずっと締め付けられるのは考え物です。それで終わればよいですが、途中にマスキングなど細かい作業を挟むこともあり、その時にマスクを外し臭気を吸うリスクが生まれます。
なんだかんだ言って、換気や防毒対策をすれば、ラッカー系が使えるのですが、さすがに水性に戻ろうと本気で思う出来事がありました。
--先日、初めてプラモデル製作スペースに行きました。入り口に入った途端、ラッカー系塗料の臭いがけっこうして、一時間ほど、塗装をせず工作作業をしていてもしんどくなってきました。
その後、エアブラシ塗装に着手しましたが、備え付けは不織布マスクのみで、きつくなってきたので、持参した防毒マスクを着けました。予定していた3時間の滞在が限界でした。
皆さんよくこの環境で何時間も居られるなと思ったのですが、店を出た時には体調が優れず、それが疲労困憊によるものなのか、ラッカー溶剤に侵されたものなのか、わからず帰宅したのでした。
この経験をへて、この趣味を永く続けていくためにも、さすがに水性塗料に移行しようと思い立ったのでした。
しかし思い返してみると、基本塗装にラッカー系塗料と水性塗料を併用していた時期があったことに気づきました。私淑するモデラー平野義高さんが雑誌作例でタミヤアクリルを用い、調色レシピを公開していました。それを参考に塗装したのが、冒頭写真のミニスケタイガーです。
水性塗料でもラッカー系と同じようにうまく仕上げられますよ、という作例がもっとあれば、普及しやすくもなるのではないかと思います。その際、水溶きでも筆塗り専門でもなく、アクリルガッシュ(もとは画材)でもファレホ(入手に難)でもなく、プラモデル用塗料ど真ん中の水性ホビーカラーやタミヤアクリルを期待したいですが、とりあえず再び自分で試してみる次第です。
以上は、ミリタリーモデルなどのつや消しか半光沢の塗装における問題であり、研ぎ出しを含むオートモデルに関しては一旦措きます。
それにしても、ラッカー系塗料は水性塗料と比べてどの程度有害なのか、いまいちわかりません。また雑誌によっては水性塗料を「無害」と書いていて驚きました。「プラモデル用塗料の有害性・有毒性」については、なかなか議論が難しいのでしょう***。かといって体感で人体実験するような現状もどうなのか、等々と思いながら、つらつら綴ってみました。
***最近では、『アーマーモデリング』300号の特集「模型の臭い、埃、騒音をなるべく断つ!!」がありますが、塗料の「臭い」が前面に出ていて、有害性についてはふわっとした記述で具体性に欠けていると思いました。画期的な特集でしたが、埃や騒音と同列に扱って、言葉をかなり慎重に選んでいる印象を受けました。「臭い」という快不快に関わる概念と「有害・無害」の議論とは、一旦区別する必要があると私は考えています。
次回以降は、これまでのタミヤアクリルの経験や水性ホビーカラーの使い心地等、上に書いたことの各論に言及できればと思います。
了