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これで読んだと思うなよ! / 20250203mon(2637字)
今日は日記は無し。その代わりに、
昨日、どうしてもやりたくなって、プロット抜き出しをここに載せる。
《タタール人の砂漠》は1940年の出版だから85年前の古典作品だ。
完璧なプロットだった(追記:僕が個人的に章のヘソを抜き出したので。みなさんにはわかりずらいと思います。悪しからず)。だが、《神は細部に宿る》。全文を読まないかぎり、この作品の凄みは伝わってこない。
それが小説だ。
《タタール人の砂漠》プロット抜き出し
1:将校に任官したジョヴァンニ・ドローゴ中尉は、任地(辺境)バスティアーニ砦へ出立した。
2:砦への最中に「大尉どの!」ドローゴ中尉は叫んだ。「君はだれかね?」オルティス大尉と出会った。
3:砦に着くが町に帰りたいドローゴ中尉。「医師の診断書が必要だ。四ヶ月ここにいなさい」「霧だって!」
4:「あのいまいましい水音はなんだね?」「水槽なんです」「水槽?」(他のみんなも起きてるのか? 狂気だ!)
5:ふた晩後、初めて第三堡塁に着く。規則に精通したトロンク曹長は砦に危機感を抱く。「合言葉が崩れている」
6:母への手紙「帰りたい。孤独だ」と書くはずだったが、「私は大いに満足して、元気にやっております」と書いてしまった。
7:「私は四ヶ月ここにいるだけだ」ドローゴ中尉は言う。「皆、何かが起こると……」仕立て屋(兵曹長)のプロズドチモは言った。
8:ドローゴ中尉は二年間の勤務を終え、アングスティーナ中尉も残った。「君は残りたいのか……」ラゴリオ中尉は砦から去った。
9:「私は間違ってここに配属されたんです」ドローゴは軍医に訴える。突然、砦の露台で塔が斜堤が陵堡が出城が宙に浮かぶ。
10:彼はある英雄的な希望(タタール人の急襲の願望)に支えられ、砦に残ることにした。が、居ることが習慣(麻痺)となった。
11:二十二ヶ月後のある夜。ドローゴ中尉は輿を担いだ妖精たち(子供のアングスティーナの姿=死んだ友達の夢)を見る。
12:新堡塁を指揮する。「トロンク! 君も見たのか?」馬だった。「おれだよ、ラッザーリだ!」歩哨のモレットは彼を射殺した。
13:死体回収現場。「死体を持ち上げろ」「撃ったのは誰かね」マッティ少佐。トロンク曹長(立派な賞状でもやればいい!)。
14:明け方、北の荒野に一条の小さく黒い線が見えた。歩兵、騎兵、軍旗、一列縦隊が見える。「タタール人だ」砲声が不吉に轟く。
15:国境線の未確定部分を画定する派遣隊。モンティ大尉とアングスティーナ中尉のカード遊び。岩棚で中尉は輿の妖精を見て死ぬ。
16:「きて何年になる」とオルティス少佐。四年が経った。「君はまだ若い。もうしばらく」「少佐も期待しているのですか?」
17:(18=帰郷への繋ぎの章)春だ。洗濯場の埃まみれの窓。さあ、砦よさらば。長居は禁物だ。何物も砦に襲いかかるものはない。
18:町はよその町。夜は楽しむ覚悟で外出したが、がっかりして帰る。「お母さん?」馬車の音だった。息子の足音も母は起きない。
19:幼馴染のマリアに幻滅と冷ややかな感情を抱く。「器量が悪くなった?」「そんなことないよ」すべてが終わったのに気づいた。
20:将軍と謁見。「私はもう四年間勤務いたしました」「君の年で四年がいったいなんだというのかね?」編成替え? 人員削減?
21:反抗もせず辞表も出さず彼は砦に帰った。「君だけじゃないんだ」とオルティス少佐。「私はタタール人の話を信じていたんだ」
22:縮小された守備隊による新たな生活。三年前に赴任したシメオーニ中尉「あの黒い染みを見つけて五日になる。あれは道路だ」
23:砦に冬が襲来してしばらく経った頃。掲示板に《遺憾なき動揺と根拠なき流言》の布告。「もう寝るよ」(臆病な奴め!)
24:また道路工事が始まるだろう。ドローゴは考える。が、望遠鏡はない。確信は消える。ある夜、戦さを口にする者が現れた。
25:砦から1キロと離れぬ北に杭が一本立つ。十五年が過ぎた。「大尉どの!」「君はだれかね?」馬を止めた。モーロ中尉だった。
26:道路は完成した。が、北の連中は姿を消した。年齢は五十手前だ。オルティス中佐と隣り合って司令部勤務だが中佐は退官した。
27:少佐に昇進して54歳だ。顔色は黄ばんで体力が衰え始めた。ドアのノックの音「やって来ますよ!」「何大隊も、何大隊も!」
28:ベッドに横たわるドローゴ少佐。「君はここに居ても役には立たない。馬車は二時に来る」シメオーニ中佐はドアを閉めた。
29:五時頃、旅籠に着いた。「年寄りは呑気なもんだ」遠ざかる隊列から聞こえる。揺籃の赤ん坊が自分を見る。俺が見ている?
30:心の奥底から死の想念が容赦なく湧き出る。誰も俺に讚美は捧げぬ。死はかつて彼が見た夢よりも遥かに厳しい戦いなのだ。
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《語彙の三語三文日課:タイピング帖》
【蝟集・いしゅう】
⑴蝟集とは一箇所に群がり集まること。例えば、異臭が蝟集するとか……。
⑵「蝟集」の「蝟」は針鼠を指す表外漢字。
⑶《たくさんの男が蝟集した。 その青白い油虫の円陣のまんなかに…… 》( 太宰治「火の鳥」より)
【山巓・さんてん】
⑴「あの山巓の絵は三点です」
「え! 満点は何点なの? 」
「三点です」
⑵沖縄県には戦跡《山巓毛・さんてぃんもう》がある。沖縄県糸満市糸満町端の糸満ロータリーの北北東、糸満警察署端交番後方にある、標高約25メートルの石灰岩丘陵だ。これは早口言葉の練習文ではない。
⑶「せんせい! 山頂と山巓はどう違うのぉ?」
「字が違います」
【誤てる・あやまてる】
⑴好奇心は身を過てる。(諺)
⑵大正末期から昭和20年にかけて日本国民は軍国主義者たちによってあやまてる愛国心を植え付けられた。
⑶2018年晩秋の北米ロサンゼルス・ショーにて、ポルシェ911は、今や世界的にも稀有となったリアエンジン・レイアウトに引っ掛けて「Wrong End(誤てる端っこ)」と揶揄された。
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短歌:
解説を
読んで、それって
違うよね?
いまだ心に
留める本音
解説:今回の《タタール人の砂漠》の解説(フランツ・カフカが行ったシステムへの暗喩にまったく触れられていない)もそうなのだが、名作小説の解説に「あれ、それって違うよね? 」ってよくある。ガルシア=マルケス《族長の秋》の解説は、ちょい筋違いなのだ。著名な中野京子さんが書いているのだが、的外れである。あの《幻の国王》は当時の《麻薬王パブロ・エスコバル》を暗喩している。大好きな作品だけに、それが悲しい……。
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