銃による決闘
1
12月の凍える朝、
冬の静けさが辺りを包む。
神秘的な森の奥深くで、
誰にも知られず男は眠っていた。
私の兄は死を選んだ、
薄汚い社会を捨てて。
人は平和な国だと言うが、
どこにだって目に見えない敵はいる。
「精霊に祈りを捧げても雨は降らない」
と嘆く村人を時代劇で見た。
牛や馬は痩せこけ、家は朽ち果て、
彼と家族は放浪の道を歩むのだった。
札束を身にまとった女優がライトを浴びて、
過去のロマンスを照れもせずに語る。
かたや私の母はやつれ、口数も少なくなり、
玄関では去年のゴキブリが死んでいた。
2
もしも私が銃を持っていたら、
悪党の不正を暴くだろうか?
それともゴロツキを何人か集め、
果てしない荒野で列車を襲うだろうか?
「英雄」とはいったい、
何を成し得た者を言うのか。
強さの中にも弱さがあるように、
誤りの中にも正解はあるだろう。
ポール・ムニが銃を手に、あなたから、
金や、縄張り、ワイフを奪っていく。
どんな存在も運命にひれ伏すのだとしたら、
努力とは愚か者のする行為なのだろうか?
思想家たちが勇気について議論しているが、
そこにいる誰もそれを持っていなかった。
猛々しい革命家の中には、
単に血に飢えているだけの輩もいる。
3
あらゆるものが凍りつき、
冬の寒さが一層厳しさを増してゆく。
画家の筆には霜が降り、
詩人の凍える舌は言葉を落としてしまう。
私たちの家は競売にかけられ、
落札者たちが私たちの酸素まで奪ってゆく。
私の父はか細い声で演説する、
「老いた者が住める国などどこにもない」と。
兄の亡霊が私に言い残したのは、
ただ「笑え」の一言。
待ち望んだ再会があっけなく終わると、
私はしばらくの間、呆然としていた。
凍える真冬の夜を経験すると、
春が訪れることすら忘れてしまう。
しかしこの星は何度でも春を体験するのだ、
核爆弾で滅んだりしない限りね。
4
銃声か、はたまた雷鳴か、
とにかく雨が氷を溶かしてゆく。
天気のように気まぐれな運命が、
私たちに犠牲の代償を支払った。
悲しげな兄の遺影の前に、
銀行が大金を置いて帰っていった。
涙を流して喜んだ私たち家族は、
なんだか少しおかしな気持ちになった。
イーストウッドの『グラントリノ』の、
ラストシーンを私は思い浮かべていた。
あの映画は舞台を近所に移した、
古典的な西部劇だったのだと気づいた。
兄の死をみんなは、
自殺か何かのように言うけど、
私にはこう思えるんだ、
彼は銃による決闘で死んだのだと。