クレオパトラ・イズ・デッド
彼女はすみれ色をした瞳の、
かわいい顔をしていた。
そして花嫁の父の前で、
少女から大人の女性に転身した。
彼女の手には『バターフィールド8』のライター、
肩にはミンクのコートが輝く。
しかし、泣いても無駄さーー
クレオパトラは死んだのだ。
ボートが湖を滑ってゆく、
陽のあたる場所へと。
そこではモンゴメリー・クリフトが、
不幸なアメリカの青年を演じていた。
彼女は青年をとても愛していたが、
いつでも恐れていたのだ、
青年が処刑台に送られるのを、
そして、クレオパトラが死ぬのを。
去年の夏、突然に、
ヴァイオレットは息子を失った。
しかし広大なテキサスには、
ロック・ハドソンの油田もある。
映画は評論家にロボトミーを施そうと、
彼らを病院のベッドに縛りつける。
残るのは、秘密の隠匿と暴露、
そしてクレオパトラの死だけ。
私は窓辺のイソシギを、
熱いトタン屋根の猫を見た。
若い男には秘密があり、
若い女は証拠を握っている。
隠された欲望は燃え上がる、
一般に普及する普通の愛よりも。
ここに「大人の詩」があり、
それは歌う、クレオパトラの死を。
老いた夫とその妻が、
真夜中過ぎに家に帰って来た。
彼らは酔っぱらい、歌い、
ケンカし、笑い、そして泣く。
彼らは互いの愛をあきらめなかったが、
代わりに互いの人生をあきらめた。
ヴァージニア・ウルフが川の中に立ち、
そしてクレオパトラは死んだのだーー
「歴史めいた闇」で。