胸が痛い(グッドモーニン・ハートエイク)
目をつぶり、すべてをやり過ごす病い。
自分の力で、前に進もうとしない病い。
「さよなら」と言うのは簡単なこと、
床に卵をただ落とすくらいに。
暴力で解決しようとする病い。
傷で確かめ合おうとする病い。
沈黙でしか喋れない患者たち、
そして愛という謎に満ちた薬。
「私には選択の自由がない」という病い。
「私を怠け者と罵る人がいる」という病い。
君の声を聞くたび、胸が痛くなる。
僕は許してしまうんだろう、おそらくね。
胸が痛い、仕事を投げ出す君に、
胸が痛い、ドアノブも掴めない君に。
いつでも欺かれることを恐れている、
君の声を聞くと、胸が痛い。
胸が痛い、空から雨粒が落ちてくると、
胸が痛い、君の瞳から涙が溢れてくると。
「あなたが持っていったの、全部返して」
君の声を聞くと、胸が痛い。
胸が痛い、幸せの鐘が鳴るたびに、
胸が痛い、窓辺のコマドリが歌うたびに。
ほんの小さな間違いを責め続ける、
君の声を聞くたびに、胸が痛い。
胸が痛い、勝者の歓喜を耳にするたびに、
胸が痛い、敗者の名前が忘れられるたびに。
「どうして人々ってあんななの?」
君の声を聞くと、胸が痛い。
胸が痛い、君が扉を閉めきっていると、
胸が痛い、君が床でのたうち回っていると。
真実はけして君を裏切りはしない、
ただ、君が手掛かりを見失うたびに
ーー胸が痛い。
みんなの言いたいことが想像できるたびに、
育てた花が枯れるのを予感するたびに、
君はここを去ろうとする。
胸が痛むよ、
けれど涙に勝る経験はないのだ。