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4.ギンリョウソウ



まえがき

 今回からは、時間があるときはテーマにあったイラストを自分で描いてアイキャッチに載せようと思う。自分で描けば著作権の問題に引っかかることはないので、何の心配もなく画像を使える。それに、自分自身のストレス解消にもなる。まさしく一石二鳥だ。

 ひとつお詫び。無視されるということ②を書く気分ではないで、筆がのるまで他のことを書く。アフォリズムなのでかっちりした構成でなくても大丈夫だと勝手に思っている……。勝手に……。読者の方には読みにくい構成になってしまっていて本当に申し訳ない。でも、思考は生き物なので、まだ孵化していなかったり冬眠していたりする思考を無理やり外に引きずり出すのは暴力的だし、そんなことをしてしまったら思考は成熟しない。ともかく、筆者はこんな感じのちゃらんぽらん人間であるので、読者の方もどうか自由に生きてほしい。

本題:ギンリョウソウ

 さて、というわけで、ギンリョウソウ。

 登山に親しんでいる方がいらっしゃったら、見かけたことがあるかも。初夏のあたりにのみ地表に顔を出す植物で、白っぽくて透き通ってる。別名ユウレイタケ。今回のアイキャッチはそのギンリョウソウなので、見たことないよって方は参考にしてください。ネットで調べると写真もたくさん出てきます。

 このギンリョウソウさん、わたしが一番好きな植物。
 何が好きなのか、結論から言っちゃうと、まずは見た目の美しさ。それに加えて、そういう生き方も許されるんだ、と思ってほっと肩の力を抜けるところ。

 これだけでは流石にざっくりしすぎてると思うので以下ギンリョウソウさんの生態について詳しく説明していくが、大変長くなってしまったので、かいつまんで読みたい人は、ここにジャンプしよう。


詳しく

 この植物には、一般的な植物と大きく違う、1つの特徴がある。一体どんな特徴があるのか、見た目から想像してほしい。ヒントは、白いこと。

 答えは、光合成を全くしないこと。ギンリョウソウさん、なんと、植物なのに葉緑体がない。だから白い。光合成をしない植物をまとめて菌従属栄養植物というそうで、その一種。植物は、わたしたちには見えない地下の世界で菌類や細菌と生きていくのに必要な栄養素のギブ・アンド・テイクを行っており、互いに補い合って生きている。そんな、植物と助け合って生きている菌類のなかに、菌糸を伸ばす菌類(糸状菌)のうちの一種で植物の根の表面や内部に菌糸を張り巡らせている菌根菌と呼ばれる菌類がいる。この菌類は土壌中のリン酸や窒素を植物に与え、代わりに植物から炭素化合物を得る、という共生関係を築いている。

 ……の、だけれど、普通はそうなのだけれど、ギンリョウソウさんの根っこと絡み合っているベニタケさんは、ギンリョウソウさんからは炭素化合物をもらえないのに、ギンリョウソウさんにリン酸や窒素を供給し続けている。搾取ですやん。と、思うよね。けれどそんなシンプルな構造じゃない。もっとえぐい。よくよく考えてみると、ギンリョウソウさん、このままでは炭素化合物を得る手段がない。自分も光合成しないし、菌類は光合成できないわけだから、どこからも炭素化合物を調達できない。でも、炭素化合物が不要な方向に進化したわけじゃない。普通に要る。ちゃんと要る。え、じゃあどうするの……? 不思議だよね。というわけで再びベニタケさんの話に戻ろう。実はベニタケさん、ギンリョウソウさんだけでなく、ある樹木さんの根っこにも絡みついている。で、その樹木さんとは相互に利益を受ける共生関係にあり、樹木さんから炭素化合物をもらっている。その炭素化合物の一部をギンリョウソウさんに横流ししているのだ。

要するに

 そう。まさしく、ギンリョウソウさんとはパパ活女子あるいはヒモ男あるいはニートであり、ベニタケさんはそんな彼らにお金を渡し続けるパパや飼い主や親族であり、樹木さんは企業である。自然界にもそういう関係性が存在しているという事実がわたしにとってはとても癒しになる。今のところ就職するか起業するかして自分でお金を稼ぐつもりだが、正直なところ、自分には労働者としての能力も経営者としての能力も欠如している。労働や経営といった行為で他者や組織の役に立っているところが想像できない。お荷物になり、ひとに迷惑をかけている予感しかしない。そんな自分にとって、労働や経営以外の方法でお金を稼ぐというのはもうめちゃくちゃ魅力的な手段なのである。けれど、資本主義社会において富を自ら創出せず、他者に依存して生きるという行為にはどうしても後ろめたさが付きまとう。そんななか、人間社会よりももっとシビアな生存競争が繰り広げられていそうな自然界の片隅で美しく、慎ましく、けれど強かに生きているギンリョウソウさんの存在は、誰かに依存する生き様を肯定してくれているような気がして、ふっと肩の荷が下りるのだ。



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