「東京で着てほしい」と応援Tシャツをその場で脱ごうとしたおばあちゃん
全米オリンピック選考会には選手の家族や友人がたくさん駆けつけた。自前の応援Tシャツを着る人も多く、どの選手の家族がすぐに見分けがつく。
女子800mレイブン・ロジャーズの家族もヒューストンから駆けつけた。
「レイブンはコロナ禍のときにメンタルのアップダウンに苦しんだけど、よくここまで来たと思うのよ」
おばあちゃんはそう語る。
1月にストームで、停電になって寒くて寒くて大変だったわ。テキサスの政治家は困ったものだわ、と言うような世間話もした。決勝前で緊張もあるのだろう。そういうどうでもいいような話の方が盛り上がる。レースのことや東京の話をすると、やっぱりお互いに緊張する。
レイブンはコーチを変更して、今は元オレゴンプロジェクトのピートの指導を受けている。五輪という大きな勝負を前にコーチを変えて、「大変だったのよ」とおばあちゃんは話す。
レイブンが代表権を獲得したあとに「おめでとう」と声をかけると、「あなたは東京にいくの?」と聞かれた。
「行きますよ、しっかりレイブンのレース見てきますね」と答えると、「私はいけないから、このTシャツ来てくれないかしら」と脱ごうとして、娘さんや姪御さんに止められていた。
「ちょっとー、汗つきなんて嫌に決まってるじゃない」
いや、ポイントはそこじゃないし。そもそも頂いても取材の時に着れないですし。
レースの日には庭に「x月x日にうちのレイブンが走るわよ」と看板を立てて、近所の人を呼んでビューイングパーティをするという。女子800m準決勝は日本時間の午後8時50分。ヒューストンは朝6時50分。ヒューストンの一角では、日本で走る孫の姿をみんなでお揃いのTシャツを着て、テレビで応援するのだろう。