青坊

なんやかんや、味わいが大切です。 mail:aobo.word@gmail.com

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【詩】地下坑道五百羅漢 静かな夜

静かな夜がそこにある 時々遠くの方から 踏切の音が聞こえてきて 故郷の集落を思い浮かべる 深海と海辺を行き来する 不思議な浜風 置き去りになった 朽ち果てた遊覧船 気まぐれな画家は 記憶をたどる ほとんど描き終えた絵を じっと見つめて筆を置く 熟れた桃の果肉を アラビア文字の書かれた 皿に置いて ひと口 コーヒーカップに口をつけて 途切れ途切れの記憶を再びたどり 波しぶきとなった言葉を紡ぐ   孤独なツグミの泣く声は   読み人のいない古書のよ

    • 【詩】地下坑道五百羅漢 シルバーシート

      何かの風景の裂け目 古く煤けた無機質な壁 部屋を満たすのは 後退りする夕暮れだけ 5時の街に残る 人と人の影と影 シルバーシートに包まれて あの深海魚はどこへ 海の底のさらに底まで 波濤が砕けて夏が沈む 夏が沈む 沈んでゆく 何で そんな 戯言を 残り2本しかない ハイライト くしゃくしゃのまま 部屋の本棚の上に置いてある 紙と葉が ちりり と 燃える 微かな音を聞きたい

      • 【詩】地下坑道五百羅漢 たらこを喰いて

        薄紅色の たらこの切り身 唇をあて 美しさを知る 均衡を破る犬歯 溢れる何か 空いた穴から 海の血肉を 吸い出せば 深海の官能で 満たされる 凪いだ夜空に 銀の星が光る 眠った月は 気づきはしない 幾夜も体を重ねる 永くはいられない それは晩秋の接吻

        • 【詩】地下坑道五百羅漢 土手沿いの

          きっと中にはおばちゃんがいる きっと中にはおじちゃんがいる 娘夫婦もその子どももきっといる 横には犬だって猫だっている 植木鉢に植えられたアロエは 家の書斎に置かれていて 息が詰まる空気を吸いながら 瞳の樹液を垂らした葉を広げている 家の前には土手があって 土手を越えれば川がある 川を越えれば街だってある 木、一本 僕はそれらの中間に立っていて アスファルトの熱に耐えながら 翡翠の雨を待ち続ける

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        【詩】地下坑道五百羅漢 静かな夜

          【詩】地下坑道五百羅漢 左打ちに転向しろと云われても、僕には右投げ右打ちが性に合っている。

          特に理由もないが何かが起きるのではないかと期待して バイトのシフトを入れなかった変哲の無い休日は雨が降っていた 午後のロードショーが終わっても未だ降り続いているので 今日も結局何も起こらないのだなと 窓を開けて雨音を聞きながら考えていたけれど 何か僕にもできないかと思ってnoteを開き 顔の脂も拭かずに エアコンもつけずに 雨に冷やされた空気を吸いながら MACのキーボードを叩き始めた    僕は落ちるところまで落ちたようだ    その自堕落の精神こそが支えとなって・・・ と

          【詩】地下坑道五百羅漢 左打ちに転向しろと云われても、僕には右投げ右打ちが性に合っている。

          【詩】地下坑道五百羅漢 平然とした日常はここに

          私とトランク一つを 降ろしていってしまった 車は乾いた音を立てながら 排気ガスと一緒に去っていった SevenStarsの煙はすぐに消えた ベルベットとアスファルト 似ても似つかない 程遠い感触 乾いたチーズ程度の 悲哀を残して 横には一つのトランクがあるだけ あと5錠しかない 薬瓶から 2錠取り出して飲み込む 海鳴り 海鳴り 海鳴り 倒れたパラソルの上を カモメが旋回している トランクに入っていた ビスケットの袋を取り出した プラスティック容器には 半分にかけたのがあるだけ

          【詩】地下坑道五百羅漢 平然とした日常はここに

          【詩】地下坑道五百羅漢 初夏の田

          5月 オタマジャクシを手のひらですくっては、流れの早い水路に流した。 何度も、飽きることなく、水の行く先へとその姿を見送った。 田の水に手を浸すと、初めのうちは四方に散らばって逃げ出すのだが、 波紋が消えてなくなる頃には、それを見計らったかのように手の周りに集まってきた。 だから、そーっと手を動かした。 そしてそのうちの何匹かを鷲掴みにして水のない世界へと連れ出した。 手の中は水から取り出したばかりの蒟蒻のように、ぶにゅぶにゅとしていて、そいつらが指の隙間をくすぐった。 5月

          【詩】地下坑道五百羅漢 初夏の田

          【詩】なんら躊躇いもなく歩を進める

          何年か前に、猟師をしている友人と長野県の山に入った時のこと。本当に冬の山は静かで、ぴぃーんと張り詰めた緊張感があった。アナーキーでオルタナティブ。なんのことかわからないけど、ここに、書き散らかした文章と写真を残します。 遠くから吹く風 遠くの谷から風がゆっくり吹いてくると、木々は揺れ、 枯れ枝に積もった雪を振り落とし、熊笹がカサカサと音を立て、 まるで山全体が風に呼応しているかのようである。 その自然現象からは独特のリズムさえも聞こえてきそう。 不規則でありながら調和のと

          【詩】なんら躊躇いもなく歩を進める