あくありうむ、またはあくいにみちている
『推しとショボンヌ』以降の、主に未来に掲載した歌たちから、25首を。
あくありうむ、またはあくいにみちている
蒼井杏
メタセコイア 名札をさげた街路樹のとなりで人待顔をよそおう
まぶしさをこらえきれずにどんぐりがいっせいに降るあのひとへ降る
ざりざりとしたねこのしたがいっしんにわたしのよるをなだめているの
一人用扇風機を手にしんごうをにょじつに秋へまたいでいくよ
カーディガンにうでをとおして水平に金木犀への朝へとむかう
くつしたのあなはえらいねいつだって全方向にたもつまんまる
まるめこむ毛玉あるいはよもやまのおはなしでした雨のましたの
しずしずとケープにいっぽんずつとおすわたしのうでをみている鏡
ロキソニンでときふせながらつれていくみぎのおくばの夏のいたみを
くるくるとストッキングをぬぎながら今日のぜんぶをうらがえしてゆく
ほらそういうところがたららシロップをかければちぢんでゆくかき氷
ロキソニン効いてくるまでおしあてる頭蓋骨内のわたしの不在
五本指ソックスだんぜんかわいいじゃん!ってめきめきふみだしてゆく
運動場という更地のいしっころたちのトゥインク☆人生変えたい!
もうむりで、タコ足をほどくひとになる。呼び水にわたしなれなかったな
いえにつくまでがえんそくぶどうあじのハイチュウを口にたてにおしこむ
ゆうつ というはつおんこぼしてにせものの みずをながしつづけるぼたん
あくありうむ、またはあくいにみちているこのよのじゃぐちをどんどんひねるよ
ひふとひふの夏の接触あせばんで供物のようなくるしいハナウタ
つらなってくるからぽかんとたちつくす白昼しほうはっぽうむてきだ
ひらひらとわたしをよぎるもんしろを夏の車輪がまきこんでゆく
天花粉パウダーきれいにはたくから きっとそっちに転生するから
液晶にむすうのきほうのみずたまの たすけて ひたすらうらめのせかい
ふみだしてゆくひとたちを わたくしはあめかんむりをかぶったままで
やぁどこからきたの ってまなざし 明朝体めいてひかりは手紙のように