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Stjomulaus Nott

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眠れない夜。包み込んでくる夜陰。 でもそれは怖いことじゃない。 時にうずくまり、時に手を伸ばし、時に思考を巡らせる。私を形づくる大切な時間。
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#エッセイ

家路を辿る

家路を辿る

日の暮れかけた歩道脇の駐車場で、兄妹が縄跳びの練習をしている。交互にひとつの縄跳びを使い、二重跳びの回数を競っているらしい。歳のころは中学、いや小学校の高学年くらいだろうか。

順調に回数を重ねられる兄に対し、妹の旗色はすこぶる悪い。跳べて四回、いや三回。一度の挑戦で毎回、十数回を跳ぶ兄とは比べるべくもない。

喧嘩にならなければいいけど。
そんな風に思っていると、そのうち妹は片手に両方の持ち手を

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夜中

夜中

子供のころは夜中に目が覚めると不安だった。
自分がいるべきでない時間。そこに来てしまった居心地の悪さ。恐れ。それらを感じ、あわてて布団に潜り込んだことを思い出す。
夜中は実にわかりやすい異界であり、禁忌だった。

今はどうだろう。
真っ暗な室内でふと目覚め、またかと煩わしさを感じる。朝まで一飛びに行き着きたいのに。寝返りをうち、目を閉じる。朝まであと何時間寝られるだろうかと計算しながら。この場合、

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声の温度

声の温度

受験のころ。ラジオが相棒だった。

トーク番組に笑ったり。音楽番組で新しい曲に出会ったり。芸能人のコラボにわくわくしたり。家人も寝静まった深夜。静寂を紛らわしてくれた存在だった。今にして思えば勉強の妨げではあったかも。

今ではラジオはスマホを通じてテレワークの相棒になった。さすがにトーク番組は仕事効率下げるので、音楽専門チャンネルに。

SNSのトーク機能はまだまだ初心者。話すことはおろか、部屋

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