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ソフィア=キルシュナー(葵の忘却のアポカリプスより)


 淡い蒼のカーテンから覗く朝日にわたしはふと左側へ頭を傾けた。あるハズのないぬくもりを、三年半前から求めている。
 あいつがここに戻る筈がない。そして、あいつを最前線に送ったのはわたしではないか。
 女であるが故に認められないこの制度がたまらなく嫌で、わたしは何度も男を超える為、他の女性がお洒落や恋愛に興味を抱く間も全て蓋をして勉学に勤しんだ。しかし結果は見ての通り。外見はいくらナイフを入れた所で何も変わらないし、わたしはこの国で認められる事は無かった。



 【ストラテジー】と呼ばれる戦場指揮騎士団に属する父様は母様が難産の末わたしを産んでくれたのだが、産まれてきた性別に愕然としていたのを覚えている。今もわたしは父様から愛情を何一つ受けることがないままここまで成長した。一度は政略結婚に出されそうになったのだが、奇しくもわたしが今も求めて止まないあいつがそれを止めてくれた。
 そして二歳歳下の腹違いの弟はただ父様の息子というだけで、現在【ストラテジー】の右腕として君臨している。

「姉様、姉様!」

 あれほど自分を律するようにと教わったはずなのに、彼は立ち位置を全く理解していない。下手をすると父様が長年築き上げてきた地位を全て無に帰すほど無鉄砲というか。

「姉様! 聞こえているでしょ、どうしてボクの事を無視するのかなあ?」
「勿論聞こえておりますわ、イアン様。ですが、【ストラテジー】の右腕ともあろう御方が不謹慎ではありませんこと?」
「そんな事よりも大変なんだ! 次の戦でボクも父様と一緒に【フレイア】と共に出ることになっちゃったんだよ」

 メタトロン帝国の最大の兵団【フレイア】。今もなお謎の魔である“招かれざるもの“から人々を守るべく魔装具を屈指して最前線で戦う英雄達だ。

 そんな事、ね。思わず彼の言葉尻を取って心の中で溜息が漏れた。
 メタトロンを守る為の精鋭部隊、その最前線である戦場を指揮する身として出陣できることの光栄さを、彼は全く理解していない。
 初陣に怯えているのだろうか。それとも、今まで何も学んでこなかった事がここで露見しているのか。今すぐに変われるものならば変わりたい。わたしは女で生まれたが故に、あいつの側で戦う事すらも赦されないのだ。

「それで、姉様に相談なんだけど、ボクと変わらない?」
「……は?」

 弟の提案にわたしは珍しく変な声が喉を突き上げた。変わる?この子は頭がおかしくなったのだろうか。そもそも、女が戦場に出て赦されるのは、【フレイア】の紅一点であるセシリアのように功績を積んだ者のみ。“招かれざるもの“の攻撃はいまだに解明されておらず、彼ら精鋭部隊とは言え、戦場に出てきた力無きものに割く労力はない。己の身は己で守れる。これが鉄則だ。 
 まだ頭の中でぐるぐると思考停止しているわたしの前で、彼はもう一度子どものようににかっと笑い、

「ボクと姉様の背格好は殆ど変わらないでしょう?それに、姉様はいつもローブを着てらっしゃる。戦場に赴く時の【ストラテジー】の正装を覚えている?」
「賢者の衣。『死地に赴く英雄達を不安にされない為に、未熟者は顔を決して見せてはならぬ』ね」
「そうそう、そういう事。ボクは、まあ……知っての通り、姉様みたいに優秀じゃないし、【フレイア】にくっついた所でお荷物じゃないか。父様に呆れられてこの地位を剥奪されたくないんだ。お願いだよ、姉様、一生のお願い!それにさ、リーシュも今回は同行するってよ」

 ここであいつの名前を出してくるなんて。この数年、“招かれざるもの“の襲撃で命を落とした【フレイア】の騎士らは数百を超える。しかし、団長の右腕であるリーシュは何度もその死地を乗り越えてきた。たった一人、愛する女を守る為に。

「どう?姉様。ボクと──」
「ええ、構わないわ。その代わりに約束して。これは一度きり。そして、貴方は父様の期待を裏切らないように今後はしっかりと勉学に勤しむ事。約束できて?」
「わ、わかったよ。ボクはこの地位を失いたくないからね」

 彼の口約束が守られた事はこの二十六年間ただの一度もない。わたしは口から深い溜息を吐き出し、彼が身につける予定であった賢者の衣に袖を通した。




「おお、イアンよ! よく来たな。今日がお前の初陣だ。儂の戦術予報は間違える事はない。今日は西の空に白き星が三つ、北に黄色の天星が二つ、“招かれざるもの“は間違いなくこのメタトロンに今日出現する」

 がはは、と大きな声で笑い、わたしの肩をバシバシ叩く父様の雰囲気は普段とは全く異なっていた。そうか、これが男に対しての対応なのかと再び自分の性に虚しさを覚える。戦術予報士は別に声を発する必要はない。イアンは初陣で緊張しているというキャラを演じる事に徹底したわたしはない胸を無理やりさらしで押さえつけ、父様の広げた地図と配置された駒に目を落とした。
 父様の予想した方角に団長を始め、【フレイア】の精鋭部隊が配属されている。しかしその意図に反した駒がスッと動いた。それを見た父様が眉間に深い皺を刻み、勝ち誇っていた顔を顰める。

「……イアン、お主はリーシュと同年代だろう、あいつを止めてこい。そっちには“招かれざるもの“は出現しない。儂の、戦術予報士の命令違反は命取りだと」

 わたしは深く頷き、リーシュの向かった方角へ馬を走らせた。ぬかるんだ土が胸騒ぎを増幅させる。そして嗅いだ事のない鉄とはまた違うざらざらした空気。
 これが命のやりとりをする戦場なのか。と、わたしも初めて感じた喩え様のない感覚に全身の感覚が研ぎ澄まされた。 
 父様を否定したくはないのだが、配置を固めるのは間違いだ。リーシュは命令違反をしたのではなく、団長からの指示なのか或いは何かを察して動いたのだろう。
 彼ら【フレイア】は屍の上に立つ軍団であり、死を間近で見てきていない私達外の人間よりも勘に聡い。正直、父様のように戦術予報士ありきの戦場ではもう“招かれざるもの“の襲撃から民を守る事は難しいのだ。星読みの力だけをあてにしても事態は何一つ変わらない。

 灰色に変色した土を踏んだところで馬が突然足を止めた。何かに怯えるように首を振り、前足を軽くばたつかせている。長年乗っていた馬が突然制御不能になるのは初めての事だ。これももしや“招かれざるもの“が影響しているのだろうか?
 手綱を軽く引っ張った瞬間、見えない何かが馬の首を斜めに薙ぎ払った。そのままゴトンと声もなく落ちた馬の首は綺麗に胴体と引き離されている。
 何が起きたのか理解できない私はそのまま横倒れになった馬の下敷きになった。500キロ近い馬の体を動かすなんてとても出来ない。まだ血が噴き出ている首側まで何とか上半身を動かし、辛うじて一瞬潰れかけた肺で浅い呼吸を繰り返した。問題はここからだ。見えない攻撃、屍と化した馬の体重に身体が重い。このままだとここで死んでしまう。
 女でありながら勝手に戦場に出た事、そして戦術予報士としての初陣を飾るイアンと入れ替わった重罪、そして大切な馬も失った。今までの努力も生きた証も全て無になってしまう。

「そんなのは……絶対、嫌!」
「イアン! お前何やってんだよ!」

 頭上から聞き覚えのある声がかかる。賢者の衣で口元しか彼に見えていないはずなので、多分わたしがイアンと入れ替わっている事はバレていないはず。
 全くびくともしない馬の死体を彼は躊躇なく剣で切り裂いた。少しずつ体にのしかかる肉が軽くなった事で、漸くわたしはよろけながら立ち上がった。右の足にかなりの違和感と痛みを覚えたが、多少の骨折はやむを得ない。生きてここから動けただけで十分だ。感謝を伝える前に彼は先を見据えていた。

「お前の言った通りになったな、ここに“招かれざるもの“は出る。団長に無理言って俺だけ出させてもらったけど、こりゃあちと厄介だな」

 リーシュはいつもの魔剣ではなく、普通の片手剣を使っていた。それに少しだけ安堵したが、イアンが此処にリーシュだけ呼んだ事に違和感を覚えたわたしは彼の右腕にしがみついた。

「ダメ、リーシュ! ヴィクトール様の所へ戻りましょう、この“招かれざるもの“はまだ研究されていないAクラス以上の化け物よ!」
「え、イアン……じゃねえ。まさか――ソフィア!?」
「今、その話をしている時間はないわ。この急所を一瞬で切り落とす手腕に見えない攻撃、とても貴方一人では……」

 そこまで言いかけたところで、リーシュが突然わたしを抱き上げ左へ飛んだ。その場に残っていた馬の死骸がぶくぶくと黒い泡を吹き出し、離れたはずの首と結合し、血液と地面を吸い上げて一つの巨大な塊と化した。

「っぶねーなあ。やっぱりAクラス以上のバケモンか」
「戻りましょう。あんなのは見たことが無い。死骸を吸収して大きくなる“招かれざるもの“なんて──」
「でもよ、あれを始末しねえと、団長達の方もヤバいだろ。俺達、『命令違反』同士だからな」

 確かに、この場から逃げたところであの化け物がメタトロンへ侵攻するのは時間の問題。かと言って、お荷物である自分がこの場に残るのも得策ではない。足となる馬は無くなってしまった今、どう動くのが確実なのか。
 思い出せ。一体わたしは、何の為に死ぬ気で全て戦術予報士になるべくありとあらゆる展開と可能性について学んだんだ!

「俺は、ソフィアを信頼してるから」

 信用ではなく、信頼。リーシュのこの言葉でわたしの気持ちは固まった。ここで信号弾を打ち上げるしか道はない。
 危険な“招かれざるもの“が出た時に打ち上げる『赤』の信号。これを団長達のいる方角に見えるだけでいい。イアンではなく、わたしがソフィアであると悟ったリーシュの余裕ある笑顔に一切の不安はない。──狡い男だ。彼は、どこまでもわたしを苦しめる。
 ソフィアではなく、【ストラテジー】の戦術予報士に戻るのに時間はかからない。この血の匂いは、わたしを現実へと引き戻してくれる。あまり嬉しくない事に。

「信号弾を打ち上げるわ。リーシュ、2分30秒稼いで」
「任せろ」

 二人の動きは完全に決まった。『刻印』を持つリーシュは“招かれざるもの“にとって格好の餌であり、我々メタトロンの人間にとって救世主であると同時に、破滅を呼ぶという二つの側面がある。使い方によって危険因子となる彼を厳重に管理しているのが【フレイア】の団長ともう一人、中立を担うクレセント大神殿にいるとある老師だ。
 わたしは信号弾の元になる赤を馬から浴びた返り血で染まった白いローブをビリビリと引き裂き、速読で術を読み上げて空へと飛ばす。赤い鳥達は東の空へと上がり、宙でチカチカと銀色の光を放ち、はらはらと地面へ落ちていく。あちらにエルフが同行しているはずなので、あの大きい音ならばすぐに気づくだろう。

「リーシュ、こっちは終わったわ!」

 くるりと踵を返すと、彼はまだ見えない刃に蹂躙され、黒く変色した馬と戦っていた。お互いに傷を負っても不思議な力で傷口が塞がっていく。体力勝負と思われそうだが、“招かれざるもの“はどうやって倒すことが正解なのか未だに解明されていない。戦いの合間に突然消えるのだ。
 馬の速度と謎の力が加算された黒い獣は何度もリーシュの腹をめがけて突撃していた。例え傷口が塞がろうとも、肉体的なダメージが消える事はない。

「あーくそっ……後で怒られるけどやるしかねえな」
「だ、ダメよ、リーシュ! ヴィクトール様が来るまで──」
「《召剣・セラフクライム》──!」

 蒼銀色の刀身を持つ美しい天使の剣が姿を現したと共に、わたしの意識はそこでふつりと途切れた。




「全く……これが偶然、Aクラスの“招かれざるもの“が出現したから良かったものの、外れていたらどうなっていたと思っておる!」

 意識を取り戻したわたしは両手首に枷をつけられたままみすぼらしい囚人服に着替えさせられていた。あの時着用していた賢者の衣はAクラスの魔物の血がついているので、別の部隊に回収され分析されている。そしてわたしの行き着く先は、独房だ。
 魔法で逃げられないよう強化された鉄格子越しに敬愛する父様に呆れた声で怒鳴られる。リーシュも召剣した後、力を【解放】したのだろう。二人共、国を守るべく最善の行動をしたのに、扱いはただの重罪人だ。

「イアンの初陣を姉が妨害するとはのう……情けない。ソフィア、お前とは今日限りで縁を切らせてもらうぞ」
「……はい」

 弟のニヤニヤした笑みにふつふつと怒りが込み上げるものの、もうどうでもいいかという気持ちしか抱かなかった。この国でいくら功績を上げたところで、女であるが故に【ストラテジー】には入れないのだ。
 セシリアのように、力があれば女であろうと関係なく【フレイア】の第一線であいつと共に戦える。でもわたしには力が無かった。あいつの助けになりたい。ならば、彼が最大の力を発揮できるよう、後方支援に徹したかった。それが、わたしの目指した場所。
 でも仕方がない。キルシュナー家から地位を剥奪されて、もうわたしにあいつの隣に立つ資格なんて──。

「おい、実の娘にあんまりじゃねえかよ、オブゾン伯」

 隣の牢屋から全く悪びれた様子もなく父様の名を呼ぶ声がした。国を救った英雄であるあいつもここに閉じ込められているなんて。
 眉間に深い皺を刻んだ父様はそのままわたしの隣にいるリーシュに突っかかった。

「英雄殿は一体何を知っておるのかな?儂の自慢の一人息子の初陣を、嫉妬に狂った姉が妨害したんじゃよ。これはとんでもない国家に対する重罪であり、極刑も免れないところを生かしてやってるんだ。感謝されるべきところで」
「あんた、親父のくせに何も知らねえんだな」
「──何じゃと?」

 更に父様の眉間の皺が深くなる。何かを察したイアンが早く戻りましょう、と小声で囁いていたが、オブゾン伯には聞こえていない。わたしとリーシュはイアンに騙された側であり、彼の望みも知っている。

「あの化け物はイアンが知っていた。俺とセシリアが化け物に殺されて死ねば万々歳、そして戦術予報を外して【フレイア】に大損害を与えたオブゾン伯は当然地位を追われ、必然的に第一子であるイアンがあんたの地位につくってわけさ。そこの無能な戦術予報士がな!」
「ぐっ……そ、そんな……デタラメを言うな。イアンよ。言い返してやるんじゃ、こやつは【フレイア】の第一線にいるからと言って」
「自惚れんじゃねえよ! 俺達は誰の為に戦ってんだと思ってんだ! てめえの地位を守る為じゃねえ。当たらない戦術予報で一体何百人の騎士が命を落としたと思ってんだ!」

 怒鳴り声と共にガシャリ、とリーシュの手枷が動く。彼の首筋から胸元に見える謎の黒い刻印がまた広がっているように見えた。一体、力を【解放】した後、誰がどうやって暴走したリーシュを止めたのだろうか。

「全く、小僧は幾つになっても騒がしいのう」
「ウ、ウォルト公爵……!」

 父様が謎の白髪の老人に突然膝をついて頭を下げた。何も知らないでぽかんとしているイアンの首根っこを捕まえ、彼も頭を下げさせている。
 この人、メタトロン帝国内で一度も見た事もないけれどそんなに偉い人なのだろうか?不躾な視線だったかもしれない。わたしの目線に気づいたウォルトと呼ばれた老騎士はわたしの入れられている独房の扉に手をかけると、そのまま鍵を握りつぶした。魔法で強化されている鉄格子をこうまであっさり壊す腕力はとても年齢を感じさせない。

「おい、じいさん。俺の方も開けてくれよ」
「お前はそこで反省しておれ。全く、余計に力を勝手に使いおってからに……ヴィクトールの始末書と眉間の皺がまた増えるだけじゃ」
「しょうがねえだろ。敵が見えなかったんだから」
「たわけ。このお嬢さんが言っておったろうに。ヴィクトールが来るまで待てと」
「ちょ、ちょっとお待ちくださいませ。あの……ウォルト様?」
「なんじゃ、美しいお嬢さんよ」

 まるで孫娘に名前を呼ばれて嬉しそうに頬を綻ばせるウォルトと呼ばれた老騎士は、父様達がひれ伏すような威圧感は感じられなかった。寧ろ、何か包み込んでくれるぬくもりを感じる。

「ええと……ウォルト様は、リーシュとどのような知り合いで?」
「ふむ。何と言えば良いかのう。不肖の弟子とでも言うておこうか」
「ウォルトのじいさんは、元・【フレイア】の団長だよ」
「え、……え、えええええ!?」

 あまりの衝撃に我を忘れて素っ頓狂な声をあげてしまった。はしたないと怒られてしまう。慌てて口を紡いだが、ウォルトはカカカ、と大きな歯を見せて大笑いしていた。

「まあ、儂”等”が来たのはそれが理由ではない」

 ウォルトの背中からひょいと顔を覗かせた銀髪の少女はあどけない蒼色の大きな瞳でこちらをまっすぐに見つめていた。その瞳はあまりにも透き通っており、見る者全てを魅了していく。

「じいやは話が長すぎるの。いいから、早くソフィアとリーシュを出して」
「彼女は……?」

 じいや、と呼びつけたところを見るとウォルトの孫なのだろうか。それにしても彼女の身に着けている法衣は確か位の高い者に与えられるものだったはず。それに、メタトロン帝国で蒼色の瞳を持つ女性と言えばただ一人しか存在していない。

 イリア=マグリアス。

 かつて、創生の巫女と呼ばれし不思議な再生の力を受け継ぐ少女だ。出生は全て謎。同じ力を持ち、蒼き瞳と銀色の髪を持つ女性にのみその名が与えられる。

「ソフィア。貴女は今日から【ストラテジー】のトップね」
「お、お待ちくださいイリア様、そやつはキルシュナー家から……」
「なあに?そこのボンボンのせいで大事なリーシュを失うところだったんだから、本来ならじいやに頼んであんた達二人とも追放してやろうと思ったくらいよ」

 委縮して正座したままの二人は肩を丸めて小さくなっていた。あれだけ傲慢だった父様が見る影もない。そして巫女は口元に穏やかな微笑を浮かべたままわたしの手枷を外した。

「ソフィア。貴女の力が絶対に必要なの。どうかあたしと共に、リーシュにかけられた呪いを解いて」



 あの時、イリアと呼ばれた巫女が放った言葉の意味は分からない。ただ、彼女とわたしの気持ちは完全に一致していた。

 リーシュを心から救いたい。

「ソフィア様、【フレイア】が戻りました。此度の戦死者はゼロです」

 使者からの報告に、わたしは堪えていた胸のつかえがスッと落ちるのを感じた。戦術予報士の行うことはただひとつ。戦死者を出さないこと。Aランク以上の”招かれざるもの”が現れた時、リーシュの力を使わずに撃退する方法についてのありとあらゆる方面からの展開。そしてもうひとつ。

「ねえ、そろそろ”招かれざるもの”って呼びにくいから何か名前を考えようと思っているの」




招かれざるものアウトサイダーってのはどうかしら?




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