学校では教えないから、私があなたに教える『エッセイ書き方』(エッセイはどういう構造になっているのか)

【はじめに】

今の時代、ブログ、SNSと、自分から情報発信する機会は、昔とは桁違いに多くなりました。
皆、表現場所があれば、表現したいと思っているのです。
自分がどんな感性を持っているかと……。
そしてその感性に共感してもらいたい。
「共感されたい欲求」と言ってもいいでしょう。
でも、パソコンやスマホに向かっていざ書こうとすると、何から書いていいかわからず、書いたとしても、まとまりのない駄文に思えて、ごみ箱行きになってしまう。
そして、もう書かなくなる。
そういう人のために、今回、順序通り考えていけば、誰でも書けるようになるマニュアル化した『エッセイ』の書き方を紹介します。
ちなみにネットで「エッセイの書き方」を検索しても、驚くほど具体的な書き方を記している記事はありません。
「自分なりの切り口で、自分なりの思ったことを、自分なりの言葉で書くのが一番です」
みたいな、抽象的なものが多いです。
それでは書けません。
結局は「センス?」と思ってしまいそうです。
でも「文章を筋道立てて書く」というのは「センス」ではありません。
何も知らず0から書いた人は「センス」かもしれませんが、二度目からは「技術」です。
「手順」と言ってもいいかもしれません。
例えば中学校の「技術」の授業で「この材料からイスを作りなさい」と言われても、なかなか作れないものです。
でも、「この木をこう切って、これとこれを釘で打って、こう組み立てればイスができあがる」と、一度「手順」を教えてもらえれば、作れるようになるはずです。
文章も同じです。
「最初は、こういう意味のこれを書いて、次はこれ、次はこう書いて、こう締めくくれば筋道立った文章はできあがる」と教えてもらえば、だれでも書けるようになります。
あとは、できあがったイスの出来映えは、どんどん場数を踏めば、もっと良くなることは容易に想像できるでしょう。

まずは「手順」を覚えてみましょう。
「手順」を覚えると、数をこなせます。
数をこなすと、徐々に見栄えが良くなります。
それでは最初に簡単に、書く手順を紹介しましょう。

【エッセイを書く手順】

日常で、ふと目にした事柄への感想、考えを書くことは、広い意味で「エッセイ」であり、それは最終的には、あなたの「思考」を表現するものです。
その書き方の「手順」を、私の書いた『ふきのとう』というエッセイを例にとって説明していきます。
まず、大雑把な構造は以下のようになります。

①見聞きしたことを書く

②その客観的情報を書く

③その感想を書く

④そこから導き出される新たな気づきを書く(オチ)

では①から順を追ってお話しします。

【ステップ1.見聞きしたことを書く】

まず①ですが、自分が「おやっ」と思ったことのエピソードを書きます。
エッセイは、この「おやっ」と気付いたことに対して、あなたが何を思ったかを伝えることが、目的です。
この「おやっ」は、人それぞれです。
それが独創的であるほど、読んで面白くなります。
その印象に残ったシーンを書くのがいいでしょう。
書き出しはやっぱり、事実説明よりも、臨場感を持って書くのがいいでしょう。
日常生活のワンシーンなら……。


アパートの部屋に帰ってすぐだった。
夕方五時以降配達の指定で、宅配便が届いた。
母からの小包だった。
中を開ける。
米、カップラーメン、スナック菓子……。
僕はふっと笑った。
どれも、こちらで買えるものばかりだが、母にとっては多分送ることに意味があるのだろう。
中にひとつ、広い口の茶色い小瓶が入っていた。
なんのラベルも貼ってない。
なんだろう……?
蓋をあけると、中には粒が目立つペースト状のものが入っていた。
匂いを嗅いでみる。
おやっ……。
ふきのとうの匂いだ。
ふきのとう味噌だ。

何かについての「感想」というと、いきなり②の「情報」から書きたくなります。
例えば

「今日、僕は、アパートの部屋に届いた母からの小包の中に、ふきのとう味噌が入っているのを見つけた」

というただの新聞記事のような事実説明で始めるのは、あまり上手い書き方ではありません。
書き出しで「ん、なんだ? なんだ?」と思ってもらうことを狙いましょう。
小説もおなじですね。
エッセイでも多くは、その体験談から始まります。

【ステップ2.その客観的情報を書く】

今度は、ここでそのシーンの客観的な情報になります。
これがないと「なんのことについて書いているのか」わからず、読む側も居心地が悪くなります。
いままで顕微鏡で覗いていた部分が、何のどこの部分かを教えてあげるのです。


もうこんな時期になったのか?
この瓶を受け取るのは二度目だった。
そのふきのとうの匂いは、僕に、東京で働き始めて二度目の春が来ようとしていたことを告げていた。
去年はこの瓶を開けて、ちょっと匂いを嗅いだだけで、そのまま食べなかったことを思い出した。
あの時は、新しい土地、新しい環境の中で、仕事もきつく感じ、心にも余裕もなかった記憶もよみがえってきた。
今は大分仕事にも慣れ、なんとかやっていけると思い始めていた。

という風に、エッセイの場合、今の状況と書いている人間がどんな人かを説明すると、読者も安心します。

【ステップ3.その感想を書く】

次に③の、その出来事に対する自分の「感想」となります。
よくありがちなブログ記事というのは「情報」とその「感想」で終わってしまっています。
「今日はこうゆうことがあった……面白かった」
「今日はこんな場面に出くわした……腹がった」
こんな話ばかりだと、まさに『日記』になってしまってしまいます。
でも、なにか一般の人が驚くような体験したのなら面白い記事になりますが、それがなければ気を引くような記事は書けないことになります。
しかし、日常でおやっと思ったことを、それなりに興味深い記事に仕上げる。
その方法がわかれば、毎日でも面白い記事は書けるのではないでしょうか。

誰しも日常的に「おやっ」と思うことはあります。
それを「ちょっと深く」読者に伝えるには、テクニックが必要です。
「おやっ」と感じるのは生まれつきのセンスかもしれませんが、その伝え方はテクニックです。

そのテクニックとは、「おやっ」と思ったことを、同じ「キーワード」でくくれる「何か」と結びつけるやり方です。
「新しく見聞きしたもの」を「既存の知識と比較する」と言ってもいいかもしれません。
でも逆に言えば「おやっ」と思ったのは、その瞬間に「自分の中の既存の知識」と何かしら結びついたからで、その結びつきと、それに対する感想を素直に述べればいいのです。

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