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オリオン座と、誘いに乗ってみて出会えた景色

立春が過ぎ、ちょっと日が長くなった近頃。久々にどっぷりと日が暮れてから外を歩いていて、ふと空を見上げるとオリオン座が光っていた。空気がしんと冷やされて水になる直前で漂っているみたいな冬の空気の中を、自転車で走り抜けたことを思い出す。

中学2年の冬、友達から「一緒に塾の冬期講習に行かない?」と誘われた。行ってみてもいいかなぁと、隣駅の塾まで二人で自転車で通った。肉まんを頬張りながら、恋話やしょうもない話をして、ケタケタ笑った15分くらいの楽しい道のり。

冬期講習が終わるとその友達とはクラスが分かれてしまい、愉快な通塾時間はあっさり終わりを迎えてしまった。それでも塾はなんだかんだ楽しかった。知らない知識も、新しい友達のノートの取り方も、生徒への気配りが上手な先生の考え方も。学びに貪欲な友人たちとの時間は、新鮮で刺激的だった。

ひとりで自転車をかっ飛ばして帰る道すがら、家に着く手前の角を曲がると、空にはひときわ明るい星たちが光っていた。それがオリオン座だと、その時初めて知った。星の明るさに目を奪われたことも、星座を意識して夜空を見上げることも、初めての経験だった。毎夜毎夜、今日の学びを反芻しつつ、オリオン座の輝きを確認しながら帰った。

今でも、冬の夜空にはオリオン座を探してしまう。明るく光る一等星と、かわいい3つ星。目で追いながら、今日の出来事を、学びを、振り返る。冬季限定の、ちょっとした習慣。

友達のちょっとした誘いから出会えた景色が、今日までつながっているなんて、不思議だなぁ、と思う。あの時断っていたら、出会えなかった。人とのつながりが、まだ知らない世界に連れて行ってくれる。そんな瞬間は仰々しいものではなくて、日々のちょっとした誘いの中に、潜んでいるのかもしれない。

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