耕す
耕すと、今までそこにあった全てのモノは、ひとつの土へと還される。
栄養をかき集めていた根っこは切断され、光を浴びていた葉っぱは暗闇の中へと落とされる。順調に育って収穫目前のモノも、成長が止まってしまいこのままでは規格外だったモノも、等しく還る。
また、いつも自分が耕すとは限らない。友達がふいにやってきて耕してしまうこともあれば、台風が天地ごとひっくり返してしまうこともある。誰もが耕す力を持っているし、その機会は唐突に訪れる。僕には制御できないのだ。
でも、土がほぐされ、空気が巡り、栄養に満ちると、そこに新たな作物が育ち始める。種は元からあったか、風に運ばれて来たものだ。今度は前よりも早く育ったり、より大きくなったり、新種が生えてきたりする。僕はこの、作物をスクスクと育てるのが好きである。そしてその健やかな成長を促すために耕すのが好きである。
たまに、耕す頻度が高いせいで全然収穫できないこともある。なんなら大体いつもそんな感じである。成果はあがらないのだけど、耕すたびに土が豊かになってきているようにも感じられて、これが良いのか悪いのかよくわからない。まあどっちでもいいかと思ったりもする。
そんなこんなで、今日も僕は頭の中を耕す。
そうしていつか大きなカブが収穫できる日を夢見る。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?