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おもいでを、砂に埋めたい


先日、海に行ったときの話。

この日は、私のリクエストを聞いてくれるという。

「どこか行きたいところある?」

「海に行きたい」

「夏でもないから泳げないし、何しにいくの?」

「小さな貝殻に一つずつ絵を描いて、おもいでを砂に埋めに行きたい!」


「は?」



B'zの大好きな曲「恋じゃなくなる日」

恋人だった二人が友達になっていく、切ない曲。
「海の砂に、おもいでを埋めていく」という歌詞が心に沁みる。

もう何百回も聞いた曲。

おもいでの曲。


この日に向かった海も、おもいでの海。

四年間、私たちを見守ってくれた海。

「恋じゃなくなる日」の歌詞とは逆で、恋人関係が生まれたことで友達関係が壊れてしまった、おもいで。


壊してしまったのは、私。

私が、当時、友達だった夫に告白したことで、全部、壊れてしまった。


私は、夫が好きだった。夫は、私の友達が好きだった。夫の友達は、私が好きだった。

(ややこしいですが、夫の友達も私の友達であり、私の友達も夫の友達で、好意を持っている同士が集まっているので自然と一緒にいることが多かったです)

すべて追っかけっこの恋。そして、全員内緒のおもいのまま友達だった。後から、実は追っかけっこの恋だったことが、分かってくるのだけれど・・

私が、絶妙に折り重なっていたバランスを崩してしまった。友達関係が見事に空中分解してしまった。


こんなことある?と思った。後に、別の友達に小説が書けるよと言われたけど、物語にしても出来すぎな、生々しく残酷な現実だった。


遠い、おもいで。



もしかしたら誰も気にしてないし、忘れてしまっているかもしれない。
でも、私の心にはある、しこり。

おもいでの海に、懺悔と共に埋めてしまいたい。

私の身勝手な、おもい。

でも、時が経った今だからこそ、沸き上がってきた気持ちだった。


おもいでの海に着き、波打ち際に向かう。

そっと手を砂の上に置き、あの日々を呼び戻しかけたその時・・・

「あははっ!」と元気な笑い声が、聞こえてきた。

子供たちが、引いては寄せる波にキャッキャと大騒ぎ。

心がほっこりした。


同じ時間を過ごした夫を、少しドキドキして見てみる。

「やほ~っい」と叫びながら、海に向かって走り出していた。


子供かよっ!

笑ってしまう。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


そうだ。 私は、おもいでを埋めにきたんだ。

青い空に目を向け、心を開こうとする。


深呼吸をして波打ち際に目を戻す。


長男がころんで、びしょびしょになって喚いていた。
次男が、「おしっこー!」と叫んでいる。

夫と長女は、これが青春だといわんばかりに、遥か彼方の波打ち際まで、走って行ってしまっている。

あぅぅ・・・

仕方がない・・

長男の着替えをするために車へ。
次男のトイレをすまし、海に戻ろうとすると、夫と長女が戻ってきて

「ごはん食べに行こう」 だって。


なんじゃそりゃぁ。

確かにお腹はすいたけどぉ。


なんも心傷に浸れなかった。
おもいでを砂に埋められなかった。




でも、違うおもいでが出来た。

埋めたくない、おもいでが出来た。



そういうことだよね。


もういいんだよね。




あの若かりし日々のおもいは、心の片隅にそっと置いておくよ。


という、なんだかよく分からない、海へ行った時の話でした。


結局、何が言いたいのかというと、B'zは、やっぱりいいね! ということです。

ここまで読んで頂いて、ありがとうございました。










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