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本当に100ある 百草蒔絵薬箪笥

根津美術館で開催中の「百草蒔絵薬箪笥と飯塚桃葉」を見に行った。

蜂須賀家おかかえとなった飯塚桃葉作品の百草蒔絵薬箪笥とそのほかの作品、そして、同じく美しく装飾された薬箪笥というものと、百草の蒔絵に生かされているとおもわれる同時代の博物学画とそれを描く観察して忠実に正しく描くという科学の精神を感じさせる博物学画の生物特に植物と一部の昆虫の絵が展示されていた。

桃葉作品だけでなく、その他の植物画や昆虫の絵、そして貝の標本とその貝をそのままはりつけたかのような蒔絵作品を見ていると、いつも思う事なのだけれど、江戸時代も18世紀ともなると、人間も含む生き物を見る目、そして工芸品のデザインなど現代人とまったく地続きでそれおど変わらないなと思う。ただし、現代と違って職人の力がもりもりなのと暮らしむきの違い、お殿様など有力な大名がいるというところが違う。

桃葉はもともと印籠などを作る蒔絵師だったようだが、よくわからない。冒頭展示の印籠のデザインはモダンでとてもいい。埋葬品だったそうだが、持ち主が愛玩してたのもわかるような、出来の良い、でも親しみの持てる品々だった。
そのほかの印籠も全部とてもいい。デザインがスッキリしていて出来が良く、いいなと思う。おもしろいのは紙ばさみのようなものについている寝付けのような印籠。五岳蒔絵が施されている。不思議な模様なので面白い。泰山、華山など道教の聖地である五つの山を表す五岳真形図という模様で、表に2つ、裏に2つ、てっぺんに1つある。おまじないといか、魔を退ける術のようなものなのだそうだ。面白いけれど、気に入ったのは猪の印籠や鶴、藤や鳥、かわいい兎や千鳥の印籠だ。

そのほかの展示蒔絵は全体に「もりもりだなあ」というどちらかというと派手というか、豪華というか、たっぷり、豊富。というイメージ。厨子、筝、鞍や鎧、太刀、まあ太刀などは豪奢というか豪華でもそういうものかなと思うけれど、笛筒などはごりごりと装飾があって、これはちょっとと私はやりすぎのような気がした。
筝の側面には8つの良い景色、水墨画にもよく出てくる八景がつくりこまれていた。これも細かく、こんなに細かく漆で?という、どうやら桃葉節というか、そういう細かい細工があるけれど、比較的スッキリしているし、景色なので見やすい。

さて、明治時代は超絶技巧とよく言われるけれど、明和の超絶技巧なのではないかと思う、やりすぎ薬箪笥、百草蒔絵薬箪笥とその中に収められていた道具と薬を包んでいた薬袋など。うーん豪華。注文主と中身が貴重なものだったというのもあるけれど、とにかくやれるだけ装飾したという感じ。とにかくすごい。全て美しくするとこうなっちゃうという箪笥。

蓋の裏には薬となる100種類の草と小さな虫、そしてちっちゃすぎて見落としてしまう草の説明(名前)が蒔絵されている。こんなに細かい蒔絵ってできるのかと思うような様々な草と極小の文字。
側面は模様のパッチワークのようで、様々な技巧を凝らして薬を飾っている。中に収めらえていた道具もとても美しい。

蓋の裏の100の草の蒔絵は何かわかるものもあり、上のほうにはたんぽぽ。右下の桔梗なんかはわかりやすい。
見るひとを圧倒するような思いっきり蒔絵と細工。びっくりします。

その後の展示はその薬箪笥に保管されていたであろう薬として登場し、蓋の裏にも描かれていた植物の博物学画、江戸時代の図譜の展示。さっき見た薬袋の中身はこれかあと思いながら見る。
蓋の裏に蒔絵されていた草は葉や花の一部のみなので、こちらでもっと大きな範囲や全体の姿を知ることができる。

ここまでが百草蒔絵薬箪笥に関する直接の資料と展示となるだろう。

それに続く展示は自然の姿を装飾として使うという同時代の気分、流行を知る展示。雪の結晶の模様の流行や貝の標本収集、そしてその収集箱をこんなに作り込んじゃう?という箱。でも、見てて、貝を集めるのは楽しかっただろうなあとおもう。綺麗だし。

何度見てもびっくりする貝尽蒔絵料紙箱 硯箱。今回もびっくり。やりすぎではとまいかい思う。リアルな姿を移すとすごいかもしれないけれど、情緒という点ではどうだろうか・・・と思うが、当時の新しい気分、観察して写生し、そのままを 表現するというエネルギーを感じる。その後も昆虫などかなりリアルな作品が続く。すっごく上手い。

私は蒔絵が好きなのと動植物も好きなので、すごく楽しい展覧会でした。現代人向けかも。見てすぐ何かわかるし。

二階の展示は大好き花鳥。一階の展示もエキサイティングだけれど、やっぱりこっちの方が落ち着く。「花と鳥たちの楽園」。瓜虫図、そして大好きな鶉図が出ていました。大好き。画面が茶色いけど。
猫が蝶を見ている有名な絵も出ていました。たしか猫と蝶でおめでたい意味があったはずなんだけれど・・・思い出せない。すぐ忘れてしまう。

梅にははちょうとか、好きな絵が多かったです。


茶室展示はついに炉開きの展示。
床に飾られているのはこんかいは花入のみでした。ふっくらした面白い形の「ふくら雀」。ざっと見渡して、ふと惹きつけられたのはびわ色の香炉。近づいてみるとあちこち蓋はふちのところが補修だらけだし、したの本体も繕ってあるけれど、なぜか目が離せない。別に好きっていうわけでもなく、好みとも違うのだけれど。時々こういうふうに道具というのは、磁石みたいにぴとっとこちらが張りり付いてしまうものがあるから不思議。物と人って不思議。



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