しどろもどろの恋の細き道をゆく (閑吟集13)
「味気なと迷うものかな しどろもどろの細道」(閑吟集)
書店に行くとたくさんの恋のマニュアル本が並んでいる。
モテるための本、男の子に注目されるための本などはもちろんのこと、ナンパをするための本、女を感じさせるための本、不倫カップルのための本まで。
まさにいたれりつくせり。
しかしその本をすべて読破し、理解したとして、その人は恋の達人になれるのだろうか。
あるいはこれらの著者は、すべからく恋の達人ばかりなのか。
それは「否」。
人間の個性が千差万別であるように、男と女の組み合わせも千差万別。
天文学的組み合わせとなるのだから、マニュアル本はあくまでも参考であり、実践ではなく、最後に頼りになるのはやはり自分の感性でしかないはず。
恋をするということは、まさに地図の無い道を行くようなもの。
いやそれ以上に、時には
道すらない所をかき分けていかなければならない時もある。
信頼していた地図が違っていたりもする。
でも、二人がしっかり手を握っていれば、 そこに道が出来、
二人が通った後には、花も咲き、街路樹も整い、二人の行く末を見守ってくれるのだ。
その道をほのかに月が照らしてくれたなら、二人は来た道を振り返り、それまでの試練をこれからの恋の力にすることができるはず。
いずことなりへも遠くへ。
「味気なと迷うものかな しどろもどろの細道」(閑吟集)
なんとまあ、迷い込んでしまったことか。乱れに乱れた恋の細道に。
この歌には不思議と悲壮感はなく、恋の細道に迷い込んだ喜びすら感じられるほどに。
「どうしてこんなに私を好きになったの?」
と、聞かれたら、しどろもどろにしか答えられない。
「じゃあ、私のどこが好きなんだい?」
そしたらあなたもしどろもどろ。
それもまた恋の道。
これからも迷いたい、道なき道を。
あなたとなら。しどろもどろに。