【TXT】Happily Ever After 歌詞の和訳と詩の解釈
TikTokの投稿総数が、ついにタイトル曲を上回るほどジワジワ人気上昇中。テヒョンの歌いだし「Oh my God (ooh) Ha ha ha ha …」からもう、おとぎ話の世界に入っていくかのようで、とにかくかわいい『Happily Ever After』。プレビューの時から「わぁ~、すごくMAXぽい曲‼」と、ウキウキしてリリースを心待ちにしていた曲のひとつでした。
MAXは、BTSの曲『Yet To Come』の制作者のひとりでもあり、2020年にはユンギさんともコラボしたシンガソングライターさん。ユンギさんとのコラボ曲のひとつ『Bluebery Eyes』は今も大好きでよく聴いています。
ヒュニンカイも、「大好きなアーティストなので、彼がこの曲に参加すると聞いた時はすごくワクワクしました」と話していましたね。
13日にはYou Tube『Tiny Desk Korea 』にて、『물수제비 (Skipping Stones)』『Chasing That Feeling』とともにトゥバのミニライブが公開されました。 生バンド演奏とコーラスに乗せる5人の歌声がなんとも贅沢で、目も耳も幸せ。 何より、みんな心からライブを楽しんでるのが伝わってきます!
↓ Happily Ever After が始まるところからクリップしています。
それでは、歌詞をみてみましょう。
曲調がはじけるように明るい雰囲気なので、直訳で堅苦しく感じたところはできるだけ柔らかめの言葉にしてみました。
※「自分で書き起こすストーリー」部分の内容を修正しました(11/24)
Happily Ever After
Produce:dwilly, Orion Meshorer, MAX
Songwriting:MAX, David Wilson, Brandon Colbein, Danke, Orion Meshorer, TAEHYUN, "hitman" bang, 전지은, 송재경, 이이진, danke, 항유빈, YEONJUN
THE NAME CAHPTER: FREEFALL 収録(2023.10)
なんてこった
終わりがわからないよ
人生はおとぎ話みたいにいかないね
分からなくてもいいじゃない、そっちの方がいい
La la la la la la
僕の毎日を愛するよ
La la la
La la la
La la la
La la la la la
僕はてっきり、自分が素敵なおとぎ話の
主人公だとばかり 思ってたんだ
少しぐらいの苦難も 最後は乗り越えて
いつまでも幸せに暮らしましたとさ
そう思ってた僕は おバカさん
気がつけば、正解のない現実
無数にある選択肢は、僕次第でしょ
僕は今どうなってるの
”ハッピーエンド” はどこにあるの
あぁ、物語を閉じても
人生はずっと続くって
気づいたよ
永遠に幸せが続くわけじゃない
なんてこった
終わりがわからないよ
人生はおとぎ話みたいにいかないね
分からなくてもいいじゃない、そっちの方がいい
La la la la la la
僕の毎日を愛するよ
La la la
La la la
La la la
La la la la la
毎日、新たな太陽に
「おはよう」と声をかける
気持ちいい文章が浮かぶんだ
まっさらなページに生まれた
自分で書き起こすストーリー
僕が作っていくよ
あぁ、どうなるかわからない結末
だから人生はもっと美しい
失敗もぜんぶ抱きしめて
僕は進み続けるよ
なんてこった
終わりがわからないよ
人生はおとぎ話みたいにいかないね
分からなくてもいいじゃない、そっちの方が面白い
La la la la la la
僕の毎日を愛するよ
僕の人生はこれからも
はてしない物語
365日、毎日
創り出す、自由なエンディング
La la la la la la
僕の毎日を愛するよ
La la la
La la la
La la la
La la la la la
La la la
La la la
La la la la la
僕の毎日を愛するよ
分らなくてもいいじゃない、そっちの方がいい
4行目「모르면 어때 知らなかったらどうなの」の”어때”には「(だからどうなの)それでいいじゃない」というニュアンスも含まれるそう。そこから、 모르면 어때 は「分からなくてもいいじゃない」に。「난 오히려 좋아 僕は むしろ 好き」は「そっちの方がいい/面白い」としてみました。
”僕は、自分が・・・”
1行目の「나는 내가 꼭 僕は自分があたかも~」は、日本語として読んだ時にやや不自然な印象なので「僕はてっきり、自分が」と並べ替えました。
3行め「짧은 역경 뒤 결국엔 승리 短い逆境の後、最後には勝利」は、やわらかくほぐして「少しぐらいの苦難も 最後は乗り越えて」に。最後の「그 후로 오래 행복했었대 その 後 長らく 幸せだったんだって」は、おとぎ話最後の決まり文句、「いつまでも幸せに暮らしましたとさ」としました。
無数にある選択肢は、僕次第
ここでわかりにくいのが、3行目じゃないかと思います。
수없는 선택지 나의 몫이지 は、直訳すると「数えきれないほどの 選択肢は 僕の役割だ」。意味が取りづらいのですが、ポイントになるのは「몫」。役割、取り分などの他(自分が自由にできる)裁量部分といった意味を持ちます。そこから 無数にある選択肢は、僕次第でしょ としました。
ちなみに「ハッピー・エンド」は和製英語で、 happy ending が正しいんだそう。初めて知りました〜。
永遠に幸せが続くわけじゃない
タイトル名がここでようやく登場しましたね。「haappiy ever after」とは、「いつまでも幸せに」の意味。
ところが”僕”は、先ほど登場したおとぎ話の決まり文句、 ”いつまでも幸せに暮らしましたとさ” なんて現実の人生ではありえない、と気づくんですね。
ゆえにここでは、「영원히 no happily ever after」を「永遠に幸せが続くわけじゃない」と訳してみました。
◇
『エバー・アフター』の物語が伝えるメッセージ
タイトルで気づいていた方も多いかも知れませんが、この曲、シンデレラをアレンジした映画『エバー・アフター』(1999)がモチーフのひとつになっているんじゃないかなと思います。
映画の舞台は16世紀フランスですが、主人公ダニエル(ドリュー・バリモア)は、少女時代に幼なじみの男の子グスタフと泥んこになるまで遊び回るなど、シャルル・ペローやグリム兄弟が書いたシンデレラとは違って、行動的で芯の強い女性として描かれています。
↓以下はネタバレになりますので、苦手な方はスルーしてください。
自分で書き起こすストーリー
現実に目覚めた僕はここで、自分の物語は自分で作ると宣言しています。
前のセクションでは ”毎日、新たな太陽におはよう”と言っていることから、「텅 빈 여백 위에 空っぽな余白の上に」は、真っ白なページに新しい物語が生まれるイメージで「まっさらなページに」、続く「생긴(생기다: 生じる、起こる の過去連体形)生じた~、起こった~」は「生まれた」に。
また、「직접 써 내려갈 直接 書き下ろす~(*내려갈は내려가다: 降りる、下ろすの未来連体形)」は、次の行 ”僕が作っていく” とベクトルを揃えるように、自分で書き起こすとしてみました。
ところで、1行目が過去形(余白の上に生じた)なのに、2行目は未来形(書き下ろす話)。時制がちょっとおかしいと思いませんでしたか。
日本語では現在形で表現することも、韓国語では、過去から現在までそれが続いている状態や、まだ起きていない(~していない)状態なども過去形で表現することが多いため、ここは「まっさらなページに生まれる、自分で書き起こす話」と訳す方が自然です。
とはいえ、気になったのがセクション冒頭の「空っぽな余白」という言葉。トゥバの楽曲の歌詞では幾度となく、同じような意味の言葉を重ねることが多く、ダブルミーニングかもしれないと考え、こんな風に解釈しました。
”僕”の人生はこれからも続き、新しい話を書き起こしていく。けれど、”空っぽな余白の上に生まれた”というのは過去の話。「THE Dream Chapter: STAR」から「THE NAME CHAPTER: TEMPTATION」までのストーリーは、僕が体験したことを、すでに物語として書き終えた ものなんだと言いたかったのではと。
また、ここでの”空っぽな余白”とは、「心の余裕がなかった」の意味にも取れそうですね。けれどそんな時代があったからこそ、今の僕がいるんだということも、伝えたかったのかもしれません。
◇
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と『鏡の国のアリス』
もう少し、深掘りしてみます。
”僕”が見つめているものや書こうとしている話が 、過去から、現在や未来へ戻ると捉えれば、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のようでもあります。
この映画は現実逃避として過去へ戻ろうとする話ではなく、今の時代がいいと、必死に現代へ戻ろうとするストーリーでした。タイムマシン「デロリアン」を発明した科学者ドクは、シリーズの最後にこんなメッセージを、主人公マーティと恋人ジェニファーに伝えて去っていくのです。
あるいは、一行目の”空っぽな”を英語にすると empty なので、アリスやマザー・グースに登場するハンプティ・ダンプティの歌からの引用を示唆しているのかもしれません。
ハンプティ・ダンプティ(卵男)は、一度割れてしまったら卵は元に戻すことができないことから、「回復できないものや人」を表す言葉としても使われます。失われた過去はもう元には戻せない⇒だから、これからを見つめて進んでいこう、そんなメッセージと捉えることもできそうです。
参考までに、ハンプティ・ダンプティはこんな詩です。
失敗もぜんぶ抱きしめて前に進むよ
─ 結末がわからないからこそ、人生はもっと美しい。失敗さえも全部抱きしめて、僕は進み続けるよ ─
曲の中でいちばん言いたかったのは、ここではないでしょうか。
繰り返し登場する「僕の毎日を愛するよ」とともに、素敵な言葉だなぁと思います。”人生”じゃなくて、”毎日”を愛する。”失敗もぜんぶ抱きしめて”っていうのがいいなぁと。心がほかほか温まる感じがします。
さてさて。訳ですが、「알 수 없는 마지막 知るすべのない結末」は、繰り返されるフレーズ「끝을 알 수 없네 終わりを知るすべがないね⇒終わりがわからない」とよく似ていますね。ここは少しだけ変化をもたせて「알 수 없는 마지막」をどうなるかわからない結末としてみました。
「그래서 더 아름다운 my life だからもっと美しい 僕の人生」はだから人生はもっと美しい へ。続く「껴안아 실패마저 抱きしめて失敗さえ」は、
마저 に「全部、残らず」の意味もあることから、失敗もぜんぶ抱きしめてとしました。
”開かれたエンディング”
”僕の人生はずっと「끝나지 않는 tales 終わりの ない 物語」”のフレーズは、トゥバの物語がファンタジーの世界での冒険を経て、現実の世界へ戻って自分の名前を取り戻していくストーリーであることから、ミヒャエル・エンデの長編ファンタジー『はてしない物語』にも、テーマが重なるように思えます。そこから、끝나지 않는 tales を はてしない物語と置き換えました。
「열린 엔딩 開かれたエンディング」は、結末が開かれている、つまり制限やあらかじめ決まっているものが何もないエンディングだということでしょう。そこから「自由なエンディング」に。直前の「내가 써 내려가는 僕が書き下ろす~」も自由と歩調を合わせるように「創り出す」としてみました。
*****☆**
曲の中にはアナザーストーリーがたくさん隠れていましたが、考えてみれば私たちも、日々あれやこれやに追われ、アリスの世界で懐中時計を片手にあわてて駆けていく”白ウサギ”や、ミヒャエル・エンデの「モモ」に出てくる”灰色の男”たちから時間を奪われてしまった人たちのようでもあります。
今回のアルバム「THE NAME CHAPTER」では、曲をひもとくごとに、”君は自分の人生の主役として生きてる?” ”自分を愛してあげてる?”と問われているようにも感じました。
ひとは時に、自分の愛の電池を満たしたいがために、友達や家族やパートナーや、いろんな人、モノ、コトに依存してしまったり、誰かをコントロールしようと躍起になってしまうことがあるけれど、本当の気持ちや願いは何なのか、自分をハグする時間 ─ 自分の心の声に耳を傾ける時間もたいせつに、毎日を愛していけたらいいなぁと思います。
そして”物語”からようやく解き放たれた今、これからはトゥバたちが話したいこと、伝えたいこと、聞いてほしいことを、彼ららしく自由な色で、音楽という旅を通して私たちと分かちあってくれたらうれしいなぁと願う今日このごろです。
最後に、記事の冒頭でふれたMAXとユンギさんのコラボ曲『Blueberry Eyes』、ヒュニンカイがMAXの曲で大好きだと言っていた、同じアルバムの『Love Me Less』を、『FREEFALL』 との重なりも感じさせるアルバムコンセプトとともにご紹介して、記事を終わりにしたいと思います。
6.Blueberry Eyes (feat. SUGA of BTS)
3.Love Me Less (feat. Quinn XCII)
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?