【TXT】Danger 歌詞の和訳と詩の解釈
「Over The Moon」の君と共にする未来への期待から一転、深くなる愛が怖いが、それでも止められない心を描き出した曲、それが「Danger」。
ヨンジュン、テヒョン、ボムギュの 3 人が作詞に参加し、メロディもボーカルも、どこかクライムサスペンスもイメージさせるようなダークな雰囲気が魅惑的でクセになります。
そして歌詞やストーリーをひもといてみると、そこには恋の情熱だけでなく、意外なストーリーが背景にあったことに気づかされるのです。
※例によって意訳ありです。ご了承くださいませ。
Danger
Produce: Johnny Goldstein, Slow Rabbit Johnny
Songwriting: Goldstein, Slow Rabbit, Sean Douglas, JBACH, Feli Ferraro, 황유빈, 조윤경, BIGHIT MUSIC, 나정아(153/Joombas), 트루(153/Joombas), 김보은, 우승연(153/Joombas), YEONJUN, TAEHYUN, danke, BEOMGYU, 이스란, 정하리 (153/Joombas)
The Star Chapter: SANCTUARY 収録(2024.11)
なんて激しい不時着
止められないんだ、気をつけろ
外れたルートなんて
忘れて没頭するよ
感情の罪に飲み込まれ
君しか見えない
抜け出せない
僕の運命の行き先から
ねぇ、君にはお手上げさ
ほら、早く
さぁ、今すぐこっちへ
僕を丸ごと飲みこんだ
この炎 ヤミツキになるよ
君にすっかり
ほら、こっちへ
君が僕を選んだんだ
狂おしいほどの
危険に
ひきずりこんだ
身を焦がすほど
蠱惑的
僕を道連れにした
手に負えない炎に
投げ込んでよ、すっかり虜なのさ
焼けつきそうなほど
危険な炎
もっとよこしてくれよ
僕に何した
君は何したの
一体どんな手を使ったんだい
世界を敵にしたって構わない、迷いはないよ
理性なんて僕の感情が追い抜くさ
効かないブレーキ 狂ったように
外れた道でも 君へと向かう
制限速度も忘れて走れば
踏み込むほどもっと強く翔けるんだ
逃げられない
僕の運命の行き先からは
ねぇ、君にはお手上げさ
ほら、早く
さぁ、今すぐこっちへ
火傷するほど熱い
炎に落ちたとしても
怖気づいたりしない
さぁ、行こう
君が僕を選んだんだ
狂おしいほどの
危険に
ひきずりこんだ
身を焦がすほど
蠱惑的
僕を道連れにした
手に負えない炎に
投げ込んでよ、すっかり虜なのさ
焼けつきそうなほど
熱い激情を
もっとよこしてくれ
僕に何した
君は何したの
一体どんな手を使ったんだい
"불길"(炎)の象徴
歌詞の中には”불길”(火の手、炎の意味)が何度か登場し、曲名の Danger(=危険)とリンクしています。炎を英語に置き換えた flame には恋人の意味もあり、テーマからしても、炎は、燃え上がる恋の炎なのでしょう。これでもかという程ほとばしる君への想いに、抑えきれないほどのアツい情熱が伝わってきますよね。
ところでトゥバのMVにはこれまで、何度か映像としての”炎”が登場してきました。「Run Away」ではヨンジュンが教室でマッチやライターの代わりにメガネに日の光を集めて着火し、あわや大惨事になるところだった、本(or ノート?)の火の手。またプールの奥底に広がっていた不思議な世界で、延々とで燃え続けていた扉の炎。
「Magic Island 」ではボムギュが水面に映り込んだ少女の影に向けて放ったランタンの火が、あたり一面に燃え広がってしまったこともありました。
「Can't You See Me」では、家の中で5人がトマトを投げ合い、次第に家は火の手に包まれていきます。
ボムギュのカバー曲「you!」。こちらも、なにげなく綴られていた歌詞のなかに ”Walked me through the fire~”とあり炎が登場しています。
walk through the fire は「難関を乗り越える、困難を克服する」の意味。
これらから、物語のなかで彼らが何度もやり直そうとトライした過去には、なかなか乗り越えることができないでいた困難があり、炎はその象徴でもあったことがわかります。
その困難の炎とは、”愛”はもちろんのこと、ネバーランドの彼方にあり、たどり着くことができずに迷路をさまようことになってしまった”(あこがれの)夢” や ”仲間との絆” であったことが、アルバム『The Name Chapter: FREEFALL』で語られています。それでも「Glowing Pain」では、たとえ傷ついても現実に飛び込み、偽りのない夢に向かうと歌っていましたね。
夢と現実の葛藤
さて。突然ですが、そんな夢と現実のはざまで葛藤する物語の、古典的名作のひとつに「ドン・キホーテ」があります。
このドン・キホーテを映画化した作品に『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(2018)があるのですが、実はトゥバのこれまでのMVなどに、その伏線らしきモチーフを多数、垣間見ることができるのです。
映画の後半には、新年を迎えるため清めの儀式で燃やすために古い物や壊れたものたち積み上げられるのですが。それに少し似たガラクタの山が「Cat and Dog」MVの後半に登場しています。
それもよーく見れば、椅子がいくつか。
『Minisode3: TOMORROW』のコンセプトトレーラーに、ヒュニンカイ、ヨンジュン、スビンの3人が順に赤い椅子に座り、横でボムギュが寂しげにぼんやり遠くを眺めながら、河原に腰かけているシーンがありました。
小説『星の王子さま』で王子様は「僕、いつか夕陽を43回も見たんだ。悲しい時は夕陽が恋しくなるでしょう」とパイロットに打ち明けていますが、Cat and Dog で5人がてっぺんに腰掛けていたガラクタの山は、アルバム『The Dream Chapter: MAGIC』以降、何度もやり直そうとしては失敗した過去の、彼らの心に隠されていた悲しみや苦悩の象徴だったのではないでしょうか。
また先ほど家が燃えていくと書いた「Can't You See Me」。映画にも、我こそはドン・キホーテと語る靴職人ハビエルの小屋が燃えてしまうシーンがあり、これも夢と現実との相克を仄めかしています。MVで5人が不穏な空気でテーブルを囲む場面も、CMディレクターのトビーが不満げな表情でスタッフらと会食しながらCMについて論議するシーンに重なるような。
「0x1=LOVESONG」(日本語版)MVには、花に囲まれたスビンの背景には、映画のなかでトビーが逃げる最中にたどり着いた場所を思わせる、不法投棄のゴミの山がありました。これは「Crown」で歌われていたような、孤独で”見捨てられた僕”の暗喩だったのかもしれませんね。
またMVで5人がいたそれぞれの部屋や屋上、教室には、光と影を映した白く大きな布が風に揺れて波打っているのですが、ひょっとしたらドン・キホーテで「夢と現実」の象徴だった風車の羽根をモチーフとして表現されたものかもしれません。
「LU$ER=LO♡ER」では、5人のダンスシーンが大型トラックにセッティングされた台座の上で行われ、わざわざこれはセットだとわかるように撮影されています。映画『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』がドン・キホーテをモチーフにしたトビーのCM撮影のシーンから始まるように、現在と過去、夢と現実、希望と絶望などのモチーフを浮き彫りにしているのかもしれません。映画で現実との葛藤や逃避の象徴として描かれた草原の風景なども、ルザラバや「Deja vu」のそれに重なっていく気がします。
さらに。「Good Boy Gone Bad」日本語版MVでの5人の隠れ家の部屋は、映画でトビーが撮ろうとしていたCMのスポンサーが所有するスペインの古城の部屋にどこか様子が似ていますし、彼らのほつれた衣服は、ドン・キホーテこと靴職人ハビエルのほつれたタイツ姿にも重なっていきます。
ほかにも。『Minisode3: TOMORROW』のコンセプトトレーラーでは、「つまり君たちの故郷は小惑星B612でみんなは王子だってことかい?」と、スビン、テヒョン、ヒュニンカイの3人に警察官が訝しげに尋ねる場面がありましたが、これも、映画のなかでドン・キホーテになりきった靴職人ハビエルが、「ドン・キホーテ(だって)?」と警察官に聞き返される(=笑い者の象徴)を彷彿とさせたり。
そして今アルバムのコンセプト「LOVER」で5人が佇む建物からの赤い垂れ幕。あれも映画後半に登場するスペインの古城からの真っ赤な垂れ幕を思わせますし、コンセプト「Knight」のナイトとは、まさに”騎士”のこと。
騎士ドン・キホーテは愛馬ロシナンテにまたがりますが、ドン・キホーテのCM撮影でスランプに陥ったトビーは、かつて学生時代に自分が撮影した映画「ドン・キホーテを殺した男」のロケ地 "LOS SUENOS"(夢の意味。字幕は「夢の村」)が近くにあることを知り、バイクで向かうのですね。
5人はそれぞれ、白馬をモチーフにしたバイクにまたがっていますよね。
「Over The Moon」のMVには、式場のような会場内を5人が走り抜けていく場面がありましたが、映画のなかで天使や鬼(?)の仮装をした人々が古城の中庭へ飛び出していくシーンに、雨が降るなかで5人が踊るシーンもやはり雨が降り注ぐ古城の場面へと連なっていきます。
ヒロインの名前がアンジェリカ(ラテン語で”天使”の意味)であることも、映画が伏線だったことはもう決定的と言っていいのではないでしょうか。
ちなみに、先日投稿されたXの画像(↓)には、黒地を背景にヨンジュンから順にメンバーがひとりずつ加わっていますが、これも、映画の中でCM撮影中のトビーの横に置かれたストーリーボード(絵コンテ)に似ています。
そういえば、あの「驚安の殿堂 ドン・キホーテ」でトゥバのCDやクレヨンしんちゃんのコラボグッズなどが販売されたことも、ひょっとしたら大ヒントだったのかもしれませんね!
◇
さてさて。ジグソーパズルのようにたくさんのピースが物語のなかに散りばめられていた『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』。ですが、この作品もなかなかにクセが強く、1度見ただけでは面白さがよくわからない。というか、中盤はストーリーが中だるみして、観ていて疲れます。もう観るの止めようかな…ってなるんですね。
でも、ひょっとしたら、それこそが監督の狙いだったのかもしれません。
というのもこの映画、1989年の構想開始から完成までになんと30年もかかってるんですね。
その間、自然災害や俳優の降板、資金の破綻など、9度もの挫折を味わい、いくら監督とはいえ、それほどに長い年月の間には、夢と現実の狭間で半ばヤケクソになったり、諦めようとしていた時期もあったんじゃないでしょうか。そんな心情を、視聴者に映画で再体験させているのかも。
長い長い、苦悩と挫折の末に完成させた物語には、ドン・キホーテらしい前半のドタバタぶりも含め、監督自身の姿や、作品を具現化するまでの過程をそのまま、ドン・キホーテの物語に重ねながら制作したのかもしれません。
そんなエピソードも知ったうえで、「Danger」の歌詞を読んでみると、”君”や”炎”は夢や情熱に、”僕”は聞き手自身とも重なって…
─思い描いた道筋どおりじゃなかったり、時に挫折したとしても、人になんと言われたっていいじゃないか、夢見ることを忘れずに進んでいこう─
こんなメッセージも伝えたかったのではないかと思わずにはいられません。
〈和訳 memo〉
*****☆**
日本でドン・キホーテと言えば、あのディスカウントストアのほかに、実はもうひとつあるのをご存知でしょうか。日本で初めてフランスパンを製造した老舗パンメーカーの「ドンク」は、その名をドン・キホーテから名付けたそうです。
新卒の頃に私が努めていた流通系の職場では、「ドンク」製造によるPB(プライベートブランド)商品を扱っていて、顧客向けの情報誌で、生まれて初めて記事を書いたのが「ドンク」についてでした。
まさか、ふたたびドン・キホーテの話に出会うなんて思いもよらず…。不思議な巡り合わせを感じます。
歌詞の解釈よりも考察(?)の方が中心となってしまいましたが、最期まで読んでくださり、どうもありがとうございました♡