他人事
「お金じゃない、って言うけど、いくらだったら
許せるの?1円でもいいの?」
約束の時間に5分遅れたことは、最初に謝罪した
弁護士からしたら、時間厳守が当然、信用第一
だろうから、それはわたしに非がある。
その日は雨だった。わたしはちゃんと起きて
出かける支度もしていた。
あそこで特急に乗り換えていれば、早く着いたかも知れない。地下鉄を一本逃した。
雨の中でも小走りに事務所をめざせばよかったのかも知れない。
わたしの膝が痛くなければ。
今年に入って右ひざがポキポキ鳴るようになり、
痛みも伴い、整形外科で毎週、水を抜いてもらってヒアルロン酸を入れてもらっている。
家の中では、ハイハイしていた時もある。
わたしはシングルマザーでふたりの子どもをひとりで育て上げ、うつ病で夜眠れなくても働いて
強烈なパワハラを受け、子どもが思春期になると夜、家にわたしがいないとさみしいだろうと思い遅番のない仕事を探したらハローワークで清掃の仕事を紹介され、子どもが落ち着くまでアンタなんでまだそんな年でと言われながら、働いて
働いて、もう子どもたちも大きくなって、
お母さんのしたいこと、してもいいよって子どもにも言ってもらえて、コロナが来た。
わたしの鬱は、波があり、上がったり下がったりしながら、時に希死念慮にもがき、時に楽しんで過ごせたりしている。
そんなわたしを奇異の目で見ている人がいるのも事実で、いろんなところでよくケンカしてきた。
冒頭の弁護士さん、「裁判までするの?」
そんなお金も労力もないですし、裁判の前にまず、調停じゃないんですか?
口先だけ人当たりの良い兄の方便詭弁にプロの
弁護士さんまで騙されたかー。
そうなるとは予想していたけど、やっぱりかー。
わたしの払った着手金なんて、ちょびっとだし、
お金にならないめんどくさい案件さっさと終わらせたいんやろうな。ホームページには、社会的弱者に寄り添うって書いてあったんだけどな。
立派な肩書きがあっても、しょせん、
他人事やからね。
ある精神科医がわたしに面と向かってゆうたよ。
「心理学を学んだからと言って、人の気持ちが
わかるわけじゃありませんからね。」
そりゃ、そうだよな。
お金もなく、運に見放されて、努力だけでなんとか生きてるやつは必要ないわけだ。
でも、悪いけど、わたしは後ろめたいことは何もないし、誠実に生きてきたから、それが誇り。
今、誰もが生きるのに精一杯でひとのことまで
考える余裕なんてないよね。
人間がイヤになって、動物に愛情求めてる人とかね。流行ってる動画とか、ヤラセやからね。
汚いものにはフタをして、キラキラだけが見たいのね。それって、幼稚ってこと。