頑張っていいんですよ
クリストフォロスのはなし
娘の日曜学校で。
ちょこんと後ろのイスに座り
一緒になって聴いたおはなし。
クリストフォロスは、
世界一強い者を探していた。
探して探して探した。
王様に仕えたが、
王様にも弱いところがあった。
悪魔にも仕えたが、
悪魔にも弱いところがあった。
世界一強い者は見つからなかった。
そして森の中に行く。
仙人のようなおじいさんから
一本の杖とともに、
この先に崖下に流れる川のそばで、
来る人、川を渡ることを必要とする人を
いつでもどんなときでも
肩に背負って、
渡らせてあげなさい、
と言われる。
そうすれば、いずれ、
世界一強い方に会えるだろうと。
クリストフォロスは
来る日も来る日も橋渡しの役を担った。
何年も何年も。
そしてあるとき。
小さなこどもが川を渡ることを頼みにきた。
もちろん引き受けて
肩に背負って渡り始めた。
天気は荒れてきた。
こどもはなぜだろうか、
先を進むごとに重さが増してきた。
どうしてこんなにも重いのか。
それでも、必死に向こう岸に向かって、
歩みを進めた。
激しい川の流れ、
荒れ狂う天候、
重たい肩の荷。
一本の杖を支えに
ようやく岸にたどり着いたとき
クリストフォロスは
このただならぬ事態に
その人の名を尋ねた。
その名は「キリスト」
おはなしはもう少しつづくのだけれど。
わたしが受け取ったもの。
それは。
どんなに重く、苦しく、辛いことでも、
それはあなたの力となり、
光となる。
そして、そんなとき、
あなたを支えている杖は、
生命の力が育まれ、
次へ繋がる力が流れている。
司祭さんはこどもたちに向かって言った。
優しい笑顔で。
「だから、頑張っていいんですよ。」
何かが、
わたしの中で音をたてて、
衝撃的に響いた。
「頑張っていいんですよ。」
正直、
40年以上生きてきたわたしは、
頑張ることは修行のようにやってきて、
もう、そんな生き方はいいや、
と思っている。
でも、
そうか。
いまを伸びやかに育っているこどもたち。
頑張ることを通り抜けるから
光を見るのかもしれない。
そして、
40を過ぎたわたしだって、
まだ頑張るときがあってもいいのか、
と真に受けた。
時代はぐぐぐーと変わってきているし
価値観も通用することも
すごい速さで
大きく変化してきている。
でも、結局すべてはバランスだし、
自分の受け取りだ。
重たい荷を単なる苦行と捉えるか、
糧となるギフトと受け取るか。
そのヒントを知っていることだけでも、
生きていく土台がずいぶん違う。
その上で、軽やかに生きたい。