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FUDO-KI

今は古代。何かが起きる時代。国が起こる時代。


〈前回までのあらすじ〉
主人公の百千武主実(ももちむすび)は、佐々仍利(ささじょうり)や八女麻亜呂(やめまあろ)らと戦闘訓練を積んでいた。そこへ近隣の村に賊が襲来するが、仍利の父である猛将 佐々孟利(ささもうり)指揮のもと討伐隊を編成して戦い賊を制圧する。
その後、武主実と仍利は国王の遣い佐田阿是彦(さたあぜひこ)と合流し、西山郷の主を主張する片岡太練(かたおかたねる)を調査した結果、片岡が元山賊であることを知る。
国王 浦島鳴(うら しまなり)が表の舞台から姿を消し、副王 賈智陽(かじやん)が台頭。3大勢力の1つ「鬼軍」を取り込み、国王一派への弾圧を始める。そして賈は遂に「黍」と国名の変更を宣言する。
 武主実と仍利は、海賊行為を繰り返す「鬼」に悩まされる海沿いの村を訪れるが…。


~第11話 隼島の戦い~

賈副王体制は磐石なものとなりつつあった。国内強化は3つの軸で行われた。

 1つ目が、賈副王が指揮を振りやすい組織の編成である。大臣にあたる上級文官は3人体制。賈副王派の尚 小(しゃんしゃお)、浦国王派の『一蛇』千田 雨根彦(せんだうねひこ)、『二蛇』佐田 阿是彦(さたあぜひこ)だ。千田と佐田の排除は敵わなかったが、1席増やし4人体制にして力を分散させた。この席には賈副王派の崔 泰烏(つぁいたいう)が着任。崔は軍師であるが政治にも精通している。
 武官も1人だった総司令を4人に増やした。元は浦国王派の阿宗 磐井(あそういわい)だけであったが、賈副王派の楯築 鯉琉(たてつきこいる)と牟 羅(もうら)、鬼軍トップの石可児 黄仁(いしかにこうじん)が着任。
これにより、国の文武両部門で賈副王派が過半数を占める体制となったのだ。

 2つ目は、農業と鉄の生産強化である。鉄は材料の調達から流通経路までの整備を国主体で進めた。武器としてだけでなく商売としても推進した。農業は治水と保存に注力して、不作の年にも対応できる体制を整えた。

 3つ目が、軍事力の整備だ。国が訓練機関を設けて戦闘力強化を図った。成果が出るまで時間がかかるが、士気は上がり軍隊としての機能も上がった。また鉄の生産強化によって多くの武器が支給されたことは大きい。


しばらくすると隼島を占拠している「鬼」ダガ兄弟の討伐命令が下った。総大将は佐々孟利。武主実と仍利そして冨田真臣(とみたまおみ)は配下として参戦となった。今回は島攻めのため、舟戦からの上陸となるだろう。

孟利は戦力の分散を避け、軍は2つにだけ分けた。主力は孟利と真臣。武主実は仍利とともに別軍となった。とは言っても作戦は単純で、孟利軍が風と潮に乗って進攻し舟戦を展開している隙に、武主実軍が上陸して拠点を奪うというものだ。

孟利軍が船団を広げて進攻するのが見える。ダガ軍も島に敵を近づけんと迎え撃つ。しばらくすると船団がぶつかり合った。戦いが始まった。怒号が聞こえ、舟が動き回るのが見える。

武主実と仍利はそれぞれ号令をかけた。
「右手に回り込み、風に乗って隼島を目指す!寄ってくる敵は薙ぎ払え!行くぞー!」
「ぅおおー!」
兵たちにも士気が伝わり、一斉に進め始めた。こちらは上陸が目的なので全速力だ。

上手く舟戦のエリアを迂回した。順調に風も吹いている。士気も高いままだ。それにしても武主実の舟は速い。舟の性能は変わらないはずなのに、常に仍利の舟の前を進む。的確に波や風を捉え敵舟の接近も許さない。

ここは隼島に近くに従い小さな島が増える。しばらく進むと岩陰に隠れてた敵舟が現れた。突如飛び出し武主実の進路を塞ぐ。回避するのは難しいタイミングだ。敵舟の将は『してやったり』の得意顔。
「グワッハッハー。魚の餌にしてやるわ!」
武主実は舟の先頭にたつ。風を浴びるその顔に焦りはない。隣に2人の男が並んで立った。
「任せたぞ。鵜照、鷹照!」

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