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FUDO-KI

今は古代。何かが起きる時代。国が起こる時代。


〈前回までのあらすじ〉
主人公の百千武主実(ももちむすび)は、佐々仍利(ささじょうり)や八女麻亜呂(やめまあろ)らと戦闘訓練を積んでいた。そこへ近隣の村に賊が襲来したとの知らせが入る。仍利の父である猛将 佐々孟利(ささもうり)は討伐隊を編成して村へ向かう。村では金品を略奪していた賊と戦闘になったが、制圧に成功した。その後、西山郷で不穏な動きがあり、武主実と仍利は傷も癒えぬまま調査に向かう。国王の遣いである佐田阿是彦(さたあぜひこ)と合流し、新しい郷の主を主張する片岡太練(かたおかたねる)と会談。会談後に山賊による急襲を受け…。


~第7話 山賊の秘密~

 片岡の屋敷に戻る途中、阿是彦の軍は山賊の一団と出くわした。阿是彦の号令により戦闘体制に展開。
 山賊は躊躇なく突撃してきた。武主実と仍利は受けてたち相手をなぎ倒す。それを横目で見ていた阿是彦はニヤリとした。やるじゃないか、と言った気持ちが表れている。そして阿是彦も強烈な一撃を次々に繰り出し、敵をふっ飛ばす。流石は二蛇と称される佐田阿是彦である。老兵の井原殿も必死に戦っている。
 この戦いは短時間で決着がついた。阿是彦軍が圧倒し、山賊は多くが倒された。2人が捕縛され、残りは散々に逃走した。


 阿是彦軍は捕縛した2人を連れて片岡の屋敷を目指した。すると屋敷の少し手前で奮戦する片岡太練がいた。部隊を指揮して山賊を左右で挟み撃ちにしている。その統制のとれた動きは鮮やか。片岡自身も刀をふるい、その強さが際立っている。

阿是彦は軍をゆっくり進めながら、その動きを見ている。
「こいつは長年訓練を積んだ軍の動きだ。寄せ集めの、短期間で組織した軍じゃねーな。しかも片岡のヤツもかなりの手練れ。」
武主実と仍利も同じことを感じ取っていた。さらに片岡軍が敵を漏らさず殺していることに気づき異常さを感じていた。

 暫くして山賊を全滅させたことで戦いは終結。阿是彦たちは片岡軍と合流した。
「佐田阿是彦様。ご助力いただきありがとうございます。」
「良い部隊じゃねーか。」
阿是彦は短い言葉で出方をうかがった。
「国と郷のために鍛えてございます。おお、山賊を捕らえておられましたか。こちらで処置しますのでお引き渡しくださいませ。」
阿是彦は何か違和感を感じ
「後でな。他も戦ってんだろ。応援は行かなくていいのか?」と答えた。
「他もおおよそ終了してございます。私は報告を受けねばなりませんので屋敷に戻ります。お休みできるよう準備いたしますので、皆様もお越しくださいませ。」
阿是彦軍は片岡隊の後について屋敷に移動した。

阿是彦は移動途中に捕らえた山賊を隣に連れてこさせた。横には武主実と仍利もいる。どうでも良いことだが、前隊の輿はダミーらしい。阿是彦はいつ襲撃されても良いように常に後隊にいる。
「おい山賊。お前らの狙いは何だ?」
「ワシらは片岡と朱久那を殺しにきた。」
「ほう。それは復讐か?前に襲ったときは違う狙いだったんだろ?」
「あいつらに騙されたんだ。片岡は同じ穴のムジナだ。前はあいつが山賊の郷を作るって言うから集まったんだ。そこを裏切り襲撃されて多くの仲間が殺られた。」
「片岡は元山賊か。ふーん、なるほどな。朱久那には何の復讐だ?」
「あいつは今でも山賊狩りをやっている。残った仲間も段々と狩られてるんだ。」
「証拠隠滅かー。朱久那ってのは何者だ?」
「あいつ元々は北の地域で祭祀をやっていて麦国の中枢と繋がってるんだ。」
「麦国の中枢だと?どいつだ?」
「それは知らねー。だが祭祀と言いながら裏の仕事を請けおってたのは確かだ。」
「よく話したな。もういいぞ。」
得てして片岡太練と朱久那の秘密が手に入った。しかし大問題が発覚してしまった。
また、高齢の井原殿は娘と孫が心配であったため、ここで帰宅することになった。


屋敷につくと阿是彦は捕らえた山賊を引き渡した。少し休みをとったが、ここで夜を明かすのはリスクが大きい。阿是彦軍は屋敷を後にすることにした。帰りの際に片岡太練が挨拶にきた。
「本社はご助力いただき、改めてお礼を申し上げます。おかげさまで全体の被害も少なく山賊を撃退できました。」
「山賊はここにいるんじゃねーか?」
武主実も仍利も阿是彦の駆け引きにゾクッとした。下手をすれば郷の軍と戦いになる。
「今おりますのは郷の主と郷の兵にございます。」片岡は顔色一つ変えない。
「郷の者のための兵なのか、郷の主のための兵なのかで意味が変わるぞ。」
「より良い郷になるよう尽力致します。」
朱久那のことには敢えて触れなかった。阿是彦軍は屋敷を、そして郷を後にした。
武主実と仍利は、先に帰宅した井原殿にお礼を言うべく家に向かった。

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